今年度のチャレンジテストに関わって

大教組が資料を作成しました

2020年6月1日

大阪教職員組合が第1回教文部長会議において,今年度のチャレンジテストに関わる資料を発行しましたので,お知らせいたします。くわしくは資料をご覧ください。

おもな内容

・今年度のチャレンジテスト(中学3年生)の中止
・チャレンジテストの制度とその問題点
【変更点】
① 1,2年生のチャレンジテストも「団体戦」に
② チャレンジテスト受験教科(5教科)と未受験教科(音美体技家)の評定平均を切り離す
【問題点】
① 学校の教育とは関係がない評定平均
② 未受験教科(音楽,美術,体育,技術・家庭)について
  中学2年の評定で3年生の評定が左右される
  各校の4科の評定平均の範囲は5教科のチャレンジテストの結果に左右される
③ 絶対評価のゆがみ
④ テスト至上主義
⑤ 各学校の教育課程への影響
⑥ 莫大な予算 小学校すくすくテストを含め,7億円
⑦ 行政調査を用いて評価→違法

チャレンジテスト資料

 

  

ジェンダー平等教育研究会(6月13日)

ジェンダー平等教育研究会

■学校再開に向けての取り組みはコチラ■

○とき  2020年6月13日(土)14時〜16時

○場所  大阪府教育会館706号東(大阪教文センター)

○内容  この間の交流,その他教科書採択にあたって

■ あなたも教文センターのサポーターに ■

サポーターになるには

① 下記(一番下)郵便振替口座へ直接申し込む。

② 下の■申し込み先■をクリックして,送付先の住所・氏名等必要事項を記入の上,件名に「サポーター希望」とお書きの上,メールを発信してください。後日,直近の大阪教育文化センターだより,おおさかの子どもと教育とあわせ,郵便振替用紙をお送りいたしますので,郵便局で振込をするか,直接教文センター事務局へカンパをお渡しください。

■ 申し込み先 ■

郵便振替 口座番号:00950-9-14083

加入者名:大阪教育文化センター

  

障害児教育研究会(6月25日)

障害児教育研究会

■学校再開に向けての取り組みはコチラ■

○とき 2020年6月25日(木) 19:00~

○場所 大阪府教育会館(たかつガーデン)705号室

○内容 この間の交流,他

■ あなたも教文センターのサポーターに ■

サポーターになるには

① 下記(一番下)郵便振替口座へ直接申し込む。

② 下の■申し込み先■をクリックして,送付先の住所・氏名等必要事項を記入の上,件名に「サポーター希望」とお書きの上,メールを発信してください。後日,直近の大阪教育文化センターだより,おおさかの子どもと教育とあわせ,郵便振替用紙をお送りいたしますので,郵便局で振込をするか,直接教文センター事務局へカンパをお渡しください。

■ 申し込み先 ■

郵便振替 口座番号:00950-9-14083

加入者名:大阪教育文化センター

  

【追加提言3】小学6年 中学3年の教育課程について

2020年5月26日 大阪教育文化センター事務局

指導内容 複数学年にわたって教育課程を編成

文部科学省は5月15日,「新型コロナウイルス感染症を踏まえた学校教育活動等の実施における『学びの保障』の方向性等について(通知)」を出し,その中で「令和3年度又は令和4年度までの教育課程を見通して検討を行い,学習指導要領において指導する学年が規定されている内容を含め,次学年又は次々学年に移して教育課程を編成する」と述べています。

このこと自体は,新学習指導要領が示す教育内容を,これまでのように何が何でも子どもと学校に押しつけようとするものではなく,2・3年の幅を持たせて,すすめようとするものであり,以前の学習指導要領押しつけ路線では今の事態は打開できないことのあらわれとみることができるでしょう。

ありえない 小学6年・中3の除外

しかし,上記の内容が,「今年度在籍している最終学年以外の児童生徒」とされていることは問題です。つまり小学校6年生と中学校3年生は,上記の内容が適用されず,新学習指導要領が示す教育内容を,長期に休校がおこなわれたにもかかわらず,残りの日程で指導せよということになります。

これはいくら何でもおかしいのではないでしょうか。小学校6年生と中学校3年生が,その他の学年の子どもたちと違って,詰め込んだら詰め込んだだけ受け入れることのできる特別の能力の持ち主だとでもいうのでしょうか。そんなことはありえないことです。

教育課程編成をおこなうのは学校

そもそも教育課程編成をおこなうのは,学習指導要領総則1の1で「各学校において…教育課程を編成する」と述べているように,学校なのですから,最終学年の教育内容をどうするかについても,学校の教育課程編成に任せるべきです。そうすれば,学校はそれを受け止め,知恵を絞ることができます。私たちの「提言」で述べたように,小学校6年生であっても,中学校3年生であっても,「子どもたちにとって大事なことを絞り込んで,教育内容の大胆な削減」をおこなうことは可能です。その場合,どうしても6年生で身につけておくべき内容は,しっかりと時間を取り,中学校でも学ぶ内容は,6年生では大胆に削減し,中学校で力を入れて教えてもらうようにすればいいのではないでしょうか。

小中連携をふまえて「持ち越す」ことも

私たち大阪教育文化センターは,すでに「大阪教育文化センターだより」143号(2020年3月26日付)で,以下のことを提案しています。

「小中一貫」や「小中連携」を活用することも可能ではないでしょうか?とかく無駄な会議をやらされることも多い「小中一貫」ですが,これを活用して,例えば,小学校で教え残しがあった場合,小学校で無理することなく,中学校で指導してもらうようお願いし,合意をつくることもできるのではないでしょうか?それは,子どもの実態をふまえた本来の意味での「小中連携」になると思います。

以上をふまえ,小学校6年生の算数をどうするかについては,以下で示しています。ぜひ,ご検討ください。

高校入試・大学入試等へは試験範囲の削減を

中学校3年生の場合は,高校受験との関係があるので,すでに「提言」で,以下のことを提案しています。

今年の高校3年生,中学3年生の多くは来年に上級学校への受験を控えています。各校長会や進路指導協議会が中心となって,文科省,都道府県教委へ受験教科(それ以外の教科も)に対する教科書の試験範囲の削減を具体的に申し入れること。例えば,数学では中学3年生は後半で学習する円の性質,三平方の定理,標本調査(統計分野)の削減,高等学校数学Ⅲでは試験範囲を微分法までにし,積分法以降は試験範囲から外すことなど。

これらを具体化すれば,中学校3年生に過大な負担を課すことなく,受験への不安もやわらげることが可能なのではないでしょうか。これもご検討ください。

【追加】小学6年算数・中学3年数学について

【小学6年算数】89時間。中学校から下りてきた「文字と式」「資料の調べ方」などとあわせ,中学校と関連する学習内容を削減すれば,分数の乗除と割合(比とその利用)しか残りません。「対称な図形」「円の面積」「立体の体積」「比例と反比例」「図形の拡大と縮小」などは基本的なことを中心に,時間があれば深く学ぶようにします。
 なお,これから分散登校が続くようであれば,
 ①くりあがり・くりさがり ②かけ算九九
(プリント・動画は 数教協■さんすうしぃ!■参照)
 ③分配法則を使用しない計算の順番
 ④将棋盤(オセロゲームなど)と碁盤(座標)のちがいやマス目の数え方
 ⑤角の大きさのとらえ方などを復習します。

小学6年算数授業計画

【 中学3年数学 】■中3数学の授業計画はコチラ■
(【提言】§3具体的なとりくみ(2)9月再開を想定した計画[2]中学・高校の場合)

【提言】学校再開に向けた、いまだかつてないとりくみを

  

登校拒否を克服する会 第205回交流会

第205回 登校拒否を克服する会 大阪交流会

日時 2020年7月18日(土) 13時〜17時 開催します
場所 エル・おおさか7階(大阪府立労働センター 天満橋駅下車)
資料代 500円

全体会 「親も子も自分を生きるー登校拒否・不登校と自己肯定感」
講 師 高垣忠一郎さん(心理臨床家,立命館大学名誉教授)
分散会 基礎講座
    特別講座=中卒生の進路(定時制・通信制,高等専修学校の先生も参加)
ミニ交流会(学年別) 小学生 中学生 高校生 青年(成年)

詳しい内容はコチラから

第206回交流会は9月20日(日)に予定

第207回交流会は11月21日(土)に予定

  

【追加提言2】「オンライン授業」について

授業—教師と子どもの息づかいが
感じられる空間だからこそ

2020年5月18日 大阪教育文化センター事務局

はじめに

提言」でもいわゆる「ネット授業」についてという項目で,その問題点について述べましたが,「オンライン授業」が必要以上にもてはやされる状況や一人一台のPCの前倒しなどがおこなわれようとしているもとで,あらためて「オンライン授業」について考える必要があるのではないかと思います。

もちろん,「オンライン授業」をすべて否定するものではありません。子どもの教育に役立つように使うことは大切なことだと考えます。
しかし,「オンライン授業」が授業をすべてカバーできるのかと言えば,そうではないと考えます。
その際,子どもたちの家庭にすべてネット環境が整っているわけではない,という問題や,そのことが引き起こす教育格差の問題は当然あり,これも大変重大な問題だと思います。
しかし,ここでは,そのことはひとまず横に置き,授業そのものをどうとらえるのかという角度から述べたいと思います。ご検討いただけたらうれしく思います。

授業は対話的・応答的関係でおこなわれます

私たちが授業に臨むとき,この教材で,子どもたちにこんなことを身につけてほしい,ここを理解してほしいと思いながら,子どもたち一人ひとりの表情やしぐさ,息遣いまでふくめて心を動かし,発問や質問をおこなっていると思います。
授業の前には,教材研究が不可欠ですが,そのときも,子どもたち一人ひとりの顔を思い浮かべながら,教材研究をしていると思います。また,授業を構想する際にも,同じように子どもたち一人ひとりの顔を思い浮かべながら,発問を考えたり,授業のすすめ方を考えたりします。

授業は「生きもの」

授業は,教師から子どもたちへの一方的な伝達ではありません。
教材を仲立ちにして,子どもと教師がお互いにやりとりをし,そのことをとおして,教材に対する認識を深めたり,子ども理解を深めたりするものだと思います。
それは,多くの先生方が経験されていることではないでしょうか。
また,授業の中で,時には子どもたちの思いもよらない発言に驚かされ,そのことによって,さらに子どもたちのみならず教師も認識が深められたり,新たな発見が生まれたりすることも,多くの先生方が経験されていると思います。

「オンライン授業」の問題点

「オンライン授業」で,そのことが可能でしょうか。
「オンライン授業」にとりくんだ岐阜県高等学校教員の斉藤ひでみさんは,
「生徒側の反応をみると,NHKの教育番組やYouTubeの講義動画などと違い,見知った学校の先生が画面に登場することに喜びを感じてくれたようです。クラスメイトと一緒に受けられる楽しさもあり,意欲的に参加してくれました」
「生徒は,新学期が始まっても新しいクラスメイトや教師に会えず,電話やメールで学校とやりとりを行う程度でした。そんな中で1カ月分の課題を出され,自律的に学ぶことを求められても,難しいことは分かります。オンライン授業で学校の先生,友だちと定期的に学ぶ時間を共有できることは,学習へのモチベーションを高め,つながりを実感できるという,大きな意義があるように思います」
と評価しながらも,
「生徒―教師の双方向的な学びを行うことが,思った以上に困難なことです。少人数ならまだしも,通常の倍以上の生徒を一度に教えるとなると,生徒たちとの双方向のやり取りは難しいのが現状です。何人もが同時に話し始めると収拾がつきませんし,生徒全員が画像を出すと授業が見づらくなってしまいます」
「私達教師も,生徒や保護者も,『オンライン授業を始めれば全て解決する』というような,過度な期待は禁物でしょう。現時点でできるのは『自宅学習課題の補完』程度のものであり,緊急事態の中で『ベストではないがベターな選択肢』として,捉えておくのが妥当だと思います」プレジデントオンライン2020年5/14(木) 11:15配信)と述べています。

■「登校日の対応と学習課題」についてはこちら■

双方向的な学びは困難

動画を一方的に流す場合は,当然のことながら対話的・応答的関係を取り結ぶことはできません。しかし,上記のように,子どもとのやりとりができる「オンライン授業」の場合でも,双方向的な学びをおこなうことが困難とされているのです。

子どもたちは集団として学びあいます

授業での対話的・応答的関係は,教師と子どもたちとの間だけで展開されるものではありません。
授業は学級という集団でおこなわれます。その中で,子どもたちどうしの対話的・応答的関係が形づくられます。
集団で学ぶからこそ,たとえば,ある子が発言したときに,
「それは,わたしの考えと少し違うような気がする」
また,「私の考えとよく似ている」
と,ほかの子が心を動かします。
そして,そのことを発言します。
そのことの積み上げによって,授業に広がりと深まりが出てくるのは,これも多くの先生方が経験されていることと思います。
「オンライン授業」では,それが可能でしょうか。

授業記録から考える…

小学校の文学教育の実際の授業記録をもとに考えたいと思います。
次にあげるのは,『明日を拓く』(2014年・部落問題研究所)に掲載されている河瀨哲也氏の授業記録です。
その授業記録から,それぞれの発問の意味について述べられている部分を削除し,本文には河瀨と書かれている部分をT,子どもの固有名詞(仮名)で書かれている部分をCとして,リライトしたものです。

教材は「ごんぎつね」。
小学校の教員ならば,ほとんどの先生がご存じの,全国でも数多の実践がおこなわれてきた教材です。

(以下 授業記録)——————
(本文)そのとき兵十は,ふと顔をあげました。と,きつねが家のなかへはいったではありませんか。
こないだ,うなぎをぬすみやがったあのごんぎつねめが,またいたずらをしにきたな。
「ようし」
兵十は立ち上がって,納屋にかけてある火なわ銃をとって,火薬をつめました。そして,足音をしのばせて近寄って,いま戸口を出ようとするごんをドンと,うちました。ごんは,ばったりと,たおれました。(子どもの音読)

T ここは,どう読めばいいのだったかな? だれの視角から書かれているのかな。
C 一斉に「兵十」

T どうして?
C 「ふと顔をあげました。と,きつねが家のなかへはいったではありませんか。」というところからわかります。ごんが自分で「はいったではありませんか。」とは言わないから。兵十の方から見ていることがわかるから。

T (みんなの納得するのを確かめて)そうだね。それでは,ここでわかること,思うことをどうぞ。
C (すわったまま)ここは,かなんとこや。言うのもかなん…。(ほかの子どもも「そうや」「そうや」と口々に言いだす)

T そうやね。だけど,ここをしっかり読まないと。いやなことだけど,そのままにしておいて…
C(前のCと同じ子) (私の言葉がおわらないうちに)「あかん。」というんやろ。わかってるがな。先生。ぼくから言うわ。「なんで,兵十は,鉄ぽうをうつんや。」「こんなにやさしいごんを殺すのや。」とぼくはいいたいのやけど,ここでわかることは,兵十は,やさしいごんのことをちっとも知らんのやからしょうがない。そやけど,ぼくは,腹が立ってくる…。

T上手に言えたね。他の人は?
C 兵十は,ごんのことを,「うなぎをぬすみやがったあのごんぎつねめ」としか思っていないことがわかるので,兵十は,ごんのやさしいのを知らないことがわかるので,火なわ銃をうつのもわかるけど…。

T それで… 自分の思うことを正直に言ったら。
C(前のCと同じ子)それで,「私は,ごんは悪いきつねじゃないよ。」と大きな声で教えてやりたいと思った。
C 「あのごんぎつねめが,またいたずらしにきたな。」というところで,ごんぎつねめの「め」とか「また」とか書いてあるので,兵十は,ものすごくごんのことをにくんでいると思う。
C そやからな,「ようし。」いうて,絶対,にがさへん。絶対,うち殺したると思っている兵十や,と思う。

T そうやろね。それで兵十は…
C 立ち上がって,火なわ銃をとって,火薬をつめて,足音をしのばせていき,戸口を出ようとするごんをドンとうった。

T その時の兵十の顔はどんな顔やったやろ?
C こわい顔
C 目がするどい。
C ぜったい命中させるぞ,という真剣な顔

T そうやろな。ところが,その時,みんなから見ると…
C ごん,あぶない。早くにげろ。
C 兵十,うったらあかん。
C 誰か出てきて,やめさせてという気持ちになってくる。

T ところが,兵十はドンと,うってしまった。ごんは,ばったりと,たおれた。兵十をみんなからみれば…
C 腹立つわ。
C 憎たらしい。うらむで,もう。という気持ち。
C ざんこく兵十や,と思う。

T 兵十にしてみたら,どうなの?
C しょうがない,わなぁ。
C そやから,ぼくらはかなんのや。(そうや,そうや。とうなずく子どもたち)
——————(以上授業記録終)

この授業記録を読めば,教師と子どもとの,また子どもたちどうしの見事な応答関係によって,「ごんぎつね」の文学的形象が,これもまた見事に読み深められていることがよくわかると思います。
こうした授業は「オンライン授業」では不可能だと考えますが,いかがでしょうか。

教室は子どもたちと教師がつくりあげる
    そこにしかない文化的空間です

先の授業記録を読めば,この教室に漂う人間的な空気感や子どもたちの表情や息遣い,教師の表情までもが浮かんでくるのではないでしょうか。そして,この授業にとどまらず,教師と子どもたちとの日常的なつながり,子どもたちどうしのつながりまで見えてくると思いませんか。
「ああ,いい学級だな」とだれもが思うのではないでしょうか。

この文学の授業に限らず,授業というのは,教材をめぐる教師と子どもの双方向の応答関係をとおして,教師と子どもたちが,あるいは,教師が子どもたちと,ともに真理・真実を追究する過程といえるのではないでしょうか。
そのことをとおして,子どもたちは,自然認識,社会認識,人間認識を深め,人格形成をすすめていきます。
先にも述べたように,教師も時には子どもたちの思いもよらない発言に驚かされ,そのことによって,教材に対する認識を深めたり,子ども理解を深めたりするものです。

授業は子どもの可能性を引き出し発展させる過程

教材とは,とりもなおさず文化財です。
「提言」にも引用しましたが,
「授業は,文化財の習得をとおして生徒の諸能力が発達していく過程であり,教材を媒介とする教師の働きかけ(発問とか教示)や生徒相互の影響のもとで生徒が自己発達をとげていく過程である。また,これを教師の側からみれば,文化遺産である教材を使って子どものなかにある可能性を引き出し発展させる過程ということができる」(『現代教育学の基礎知識』1979年 有斐閣ブックス)
これが,授業の本質ではないでしょうか。

授業の中でこそ発揮される教師の専門性

実際の授業場面で教師は,たとえば一つの発問をおこなったときの,子どもたち一人ひとりの表情やしぐさ,息遣いまで見逃さず,おそらくこのような発言をしてくれるだろうなと瞬時に判断して子どもを指名します。
その子の発言に,おそらくこの子は少し違う意見を発言するだろう,あるいはよく似た意見を発言するだろうと判断して,子どもたちの意見をつなげ,広げ,授業の深まりをつくろうとします。
また,その発問に首をかしげている子や「うん?」という表情をしている子がいれば,これも瞬時に判断して発問を変更したり,砕いたりして授業をすすめます。

これこそが教師の専門性の発揮であり,こうしたやりとりが形づくる空間が,まさにそこにしかない文化的空間なのではないでしょうか。
「オンライン授業」でこのような文化的空間を形づくることができるでしょうか。大変困難だといわなければなりません。

おわりに

冒頭にも述べたように,「オンライン授業」をすべからく否定するものではありません。情報通信技術の進歩は重要であり,それは,人類の文化の前進のために使われることが求められます。
教育においても,情報通信技術の進歩をうまく使って,よりわかりやすい授業をつくったり,日常の教育活動をすすめたりすることは必要だと考えます。
しかし,「オンライン授業」万能論に近い論調が広がっていることは危険だと考えます。
それは,授業の持つ本質をゆがめることになりかねず,使いようによっては,本来集団で学びあうべきである学習活動を,学習を個別化して,子どもどうしを切り離してしまう危険があると考えるからです。
以上,問題提起しました。いかがでしょうか。ごいっしょに考えあうことができればと思います。

【追加提言3】小学6年 中学3年の教育課程について

  

【追加提言】登校日の対応と学習課題

休校中の登校日の対応と休校中の学習課題について

2020年5月13日 大阪教育文化センター事務局
5月18日 算数プリント類案内追加
5月22日 数学プリント類追加

 全国一律休校要請とそれに続く緊急事態宣言にともなう休校措置が約3か月に及ぼうとしています。5月1日に文部科学省が「新型コロナウイルス感染症対策としての学校の臨時休業に係る学校運営上の工夫について(通知)」を出したこともあり、各地で休業期間中の登校日が設定され、分散登校が始まっています。
 また、これまでもおこなわれていましたが、この分散登校と一体に、家庭学習の課題を子どもたちに渡して、学習を促すとりくみもすすめられています。
 この休校中の登校日をどうするか、休校中の学習課題について、どう考えればよいか、先生方もいろいろ考えておられることと思います。私たち教文センターは、先に出した「提言」※(4月27日)をふまえ、以下のように考えます。ごいっしょに考えあいたいと思います。

※■【提言】学校再開に向けた いまだかつてないとりくみを■

§1.休校中の登校日について

登校日は子どもたちとの最初の出会い

 分散登校という変則的な登校日とならざるを得ませんが、しかし、それが子どもたちとの今年度の最初の出会いであることは間違いありません。この休校期間中、子どもたちはさまざまな過ごし方をしてきたと思いますが、「提言」にも書いたように、大人以上の寂しさと、不安を抱いて過ごしてきたに違いありません。
 まずは、その子どもたちをやわらかく受け止めたいですね。新任の先生方にとっては、文字通り初めての子どもたちとの出会いです。また、新しい学校に赴任されてきた先生方にとっても、初めての子どもたちとの出会いです。
 その学校に何年か勤務されている先生方は、持ち上がりの場合は、昨年度担任した子どもたちがいます。そうでない場合でも、これまで担任した子どもの兄弟や児童会・生徒会や委員会活動、部活動で見知った子どもたちがいると思います。
 しかし、どの場合でも、子どもたちとの新しい出会いです。子どもたち一人ひとりとの出会いを大切にしたいですね。

子どもの様子をみるチャンス

 休校中の登校日は、子どもの様子を把握するチャンスです。地域によれば、登校日におこなうこととして、たとえば、①健康観察、②課題の確認、③体を動かすなどが提起されているところもあるでしょう。その場合でも、機械的にそれをおこなうことは避けたいと思います。
 健康観察の場合でも、チェックシートに書き入れるという対応ではなく、子どもの様子をしっかり見て取ることが大切だと思います。休校前の子どもを知っていれば、登校したときに「この子、少しやせたみたい」と感じたら、家庭の事情から昼食を満足に食べることができていなかったのではないだろうか、あるいは夜にはコンビニ弁当ばかりで過ごしていたのではないだろうか、と心を働かせることが大切でしょう。

子どもの気持ちを思いやり 向きあう

 また、少し顔色が悪い子もいるかもしれません。子どもが家にずっといるストレスで、父母・保護者も子どもとの関係がよくない状態にある場合、子どもの居場所であるべき家庭が、子どもにとって生きづらい場になっており、そのことが原因となって、健康状態に問題が生まれている場合もあるかもしれません。
 
 登校日に子どもと対面することによって、子どもに声をかけて励まし、そうした子どもの実態を把握し、必要な手立てを打てる場合も生まれてくるのではないでしょうか。
 このように子どもを見て取り、子どもとの言葉のやりとりもとおして、この子は休校期間、どんな生活をしてきたのだろう、という想像力を思いきり働かせて、子どもに向き合いたいものです。

職員室で語りあえば 課題も見えてくる

 そして、職員室に帰ったら、「あなたのクラスの子ども、どうだった?」と同僚と様子を語り合ってみたらどうでしょう。その語り合いをとおして、課題を抱える子どもに対する手立てが見えてくる場合もあるのではないでしょうか。そうすれば、課題を一人で抱え込まなくてもすむと思います。
 学習課題の確認についても、休校期間に家庭で、どんなふうに勉強してきたのか、いろいろな要因で家庭学習がうまくすすまなかった子どもが、そのことを語れるような空気のもとで、おこないたいと思います。

新しい先生はまずは自己紹介から楽しく

 新任の先生や新しく赴任された先生は、「君たちにあえて、本当にうれしい」という気持ちをうんとふくらませて、自分の自己紹介を楽しくやりたいし、子どもの自己紹介とキャッチボールするようにできればいいですね。
 そんなことをとおして、子どもたちも「やっぱり学校っていいな」と思えるような登校日になるよう、工夫しませんか?

交換日記などで伝えあい

 また、可能であれば、子どもたちと日記をやりとりすることもいいと思います。「先生は、みなさんと心と心をつなぎたい。だから、あなたが、おうちでどんなふうに過ごしたのか、どんなことを考えていたのか、先生はとっても知りたいと思います」と語って、「次の登校日にもってきてね」と伝えましょう。
 そうすれば、子どもたちと双方向のやりとりができ、子どもは先生と学校をイメージしながら、先生は子どものくらしをイメージしながら、毎日を過ごすことができ、子どもも先生も次の登校日が楽しみになるのではないでしょうか。

登校日は子どもとの出会いを大切にする日

 そんなふうにして、登校日を子どもとの出会いを大切にする日、子どもを発見する日とすることができれば、学校が再開したときには、フッと力を抜いて子どもたちに出会える新しい世界からの出発ができるのではないでしょうか。
 とはいえ、学校が再開されたとしても、これまでと同じように、すべての子どもたちが登校して学校生活が始められるかどうか、まだはっきりしたことはわかりません。
 でも、どのようなスタートになったとしても、先生は、これまで抱いてきた「子どもに会いたい」という思いをうんとふくらませ、子どもたちの「学校に行きたい。先生と会いたい」という思いと重ね合わせることができれば、必ず新しい出発ができると思います。

§2.休校中の学習課題について

家庭学習は教育の専門家としての判断で

 休校中であっても、子どもたちに学習課題を与えることは必要なことです。でも、何をどう与えるかについては、よく考える必要があると思います。
 最近のTVで、学校から課題を与えられた子のお母さんが、「家で教えるのは難しい」と語っている姿が放映されていました。確かにそのとおりで、学校がそのつもりはなくても、結果として、家庭に学校の役割を押しつけてしまうことは避けなければなりません。
 ですから、子どもたちの家庭での学習のために、何をどう与えるかについては、教育の専門家としての判断が求められます。
 2つのことを考えておいたらどうでしょうか。

課題は 前学年の復習を中心に

 第1は、課題については、前の学年の復習を中心にし、前の学年の学習で、「ここに力を入れておけば、新しい学年での学習をすすめるうえで役に立つ」という内容を精選することです。
 小学校の算数を例にとると、一番わかりやすい例は、新3年生の場合、2年生でのかけ算をしっかりやっておくことです。
 3年生の算数では新しくわり算を勉強します。わり算の学習のためには、1あたり×いくつ分=全体の量というかけ算の意味が分かり(これは等分徐、包含徐を理解するために大切です)九九が自在にあやつれることが重要な条件となります。

前学年で扱った教材の音読や漢字復習

 また、国語では、読むことと書くことの基礎をしっかりやっておくことではないかと思います。国語の教科書の音読は日常の家庭学習としても多くの先生方が宿題という形で出しておられるのではないでしょうか。
 前の学年で習った優れた文学作品や説明文をよどみなく読むことができるように音読の練習をやることは、新しく始まる学年での学習にきっと役立つと思います。
 書くことでは、漢字の復習をやることがいいのではないかと思います。漢字は前の学年で習った漢字だけでなく、たとえば4年生ならば、2年生の漢字から復習しておくのもいいと思います。なぜならば、2年生でも「曜」や「顔」などの18画という画数の多い漢字を習っていますが、そのときには覚えきれなかったということも考えられるからです。

 このような課題を与えれば、父母・保護者に負担をかけることなく、子どもたちが自分の力でとりくむことができるのではないでしょうか。

子ども・保護者へのメッセージとともに課題を

 第2は、子どもたちが意欲をもってとりくむことができる工夫と、父母・保護者が負担に感じることのないような工夫が必要だと思います。
 たとえば、課題を出す場合でも、「〇〇をいつまでにやってきなさい」という形ではなく、子どもと父母・保護者へのメッセージといっしょに課題を渡すということも考えられるでしょう。
 そのメッセージでは、「今日の課題は前の学年での復習だけれど、これにしっかりとりくむことによって、新しい学年でのこの学習にきっと役立つよ」ということが子どもに伝わるようにしたいものです。
 また、父母・保護者にも、「今この課題をやる意味は、ここにあります。だから、子どもの学習を見守ってあげてください。お母さんが無理に教えようとしないでいいですよ。もし学習につまずきがあれば、それは学校が始まってから、子どもの実態をよくみて、私の方でしっかりと教えたいと思います」ということが伝わるようにしたいものです。
 
 そんな中身の学級通信といっしょに子どもに課題を渡せば、家庭学習のとりくみ方が変わってくるのではないでしょうか。いろいろな工夫ができると思います。ぜひ、とりくんでみてください。

【追加1】仮説社「たのしい授業5月号」から「新型コロナウィルスって?」という動画があります。授業にも使えます。15分

以下のサイトにこの動画のパワーポイント版、PDF版、解説資料、ワークシートなどがダウンロードできるようになっています。

■解説資料等のダウンロード■

【追加2】何森真人さん(数教協)より、休校中の分散登校、家庭学習に使えるプリントの提供。「ウチで学ぼう!算数」のデータ集(PDFファイル)です。「家庭で」「学校でいつもより短い時間で」「学校と家庭学習を合わせて」などに利用できます。

3年算数:たし算の筆算(PDF)

■算数プリントダウンロードはこちら■(さんすうしぃ!!)

①小2:たし算の筆算 ②小2:ひき算の筆算
③小3:たし算の筆算 ④小3:ひき算の筆算
⑤小3:あなあきかけ算(わり算の前に)
⑥小3:かけ算の筆算の前に
⑦小34:わり算の筆算プリント作成シート
⑧小4:わり算の筆算(÷1ケタ)
⑨小5:小数のかけ算 ⑩小6:分数のかけ算

【追加3】中学2年数学プリントを追加。中3の復習用として,また中2の単元のまとめとして。基礎計算プリント=くりあがり・くりさがりのある問題を三角形や平行線の角度の問題として追加しています。(zipファイル)

中学2年数学復習プリント

【追加4】中学3年数学プリントを追加。中3の演習用として。①基礎計算プリント=くりあがり・くりさがりのある問題を円周角の問題として ②式の展開・因数分解 ③平方根計算 ④2次方程式 ⑤円周角72題 ⑥テスト問題を追加しています。(zipファイル)

■中学3年数学プリント■

【追加提言2】「オンライン授業」について

【追加提言3】小学6年 中学3年の教育課程について

  

【提言】学校再開に向けた、いまだかつてないとりくみを

いまだかつてない事態には,いまだかつてないとりくみを
―子どもたちにとって大事なことを絞り込んで,教育内容の大胆な削減を―

2020年4月27日 大阪教育文化センター事務局
4月29日更新 5月8日算数 6月10日要約と補足追加

■5月26日【追加提言3】小学6年 中学3年の教育課程について■

大阪教育文化センターだより145号(6月9日)
■学校再開への4つの提言 要約と補足■

§0.はじめに

 新型コロナウイルスにかかわる休校期間は,きわめて長期にわたるものであり,子どもたちも,父母・保護者のみなさんも,先生方も,いまだかつて経験したことのない事態となっています。いつ学校が再開できるのだろうか,という不安とともに,学校再開後の教育活動はどうなるのだろうという心配もあります。

子どもにとって何が必要か

 このような,いまだかつて経験したことのない事態に対して求められる教育活動は,従来の枠組みにとらわれていては,対応できません。従来の枠組みを超えた「いまだかつてないとりくみ」が必要です。その際,もっとも大事なことは,子どもにとって何が必要かであり,そのことを中心に据えてとりくむことが何としても求められると考えます。

学習指導要領に子どもを合わせない

 そのためには,新学習指導要領にとらわれるのではなく,子どものための教育課程づくりこそが重要です。マスコミ報道では,もう今から「夏休みをなくす」と言っている自治体の長も生まれてきているようですが,とんでもないことです。そんなことをすれば,子どもを追い詰めてしまうだけです。学習指導要領に子どもを合わせるのではなく,子どものための教育をどうつくりあげるかが,もっとも大切にしなければなりません。
 教職員組合は,新学習指導要領を押しつけないことを教育行政に求めましょう。そして,同時並行で学校でのとりくみをすすめましょう。

単純に行事を削減するのではなく

 学校でのとりくみでは,教科指導においては,その学年の子どもたちにとって,本当に大事な中身は何かを考え抜き,それに絞り込んで教えること,教科外活動においては,単純に行事を削減することなく,行事もふくめ,子どもの成長・発達にとって大事な活動にしっかりとりくむことが必要だと考えます。
 その立場から,以下,いくつか提案したいと思います。各学校での積極的な検討を心からお願いします。

■「戸惑いと不安と恐れのなかに希望を見いだす」■(参考)

【追加提言】休校中の登校日対応と学習課題についてはコチラ

【内容】
§1.いつにもまして,子どもとの出会いを大切に―子どもを丸ごと受け止めよう
§2.今こそ教育の専門家としての教師の力の発揮を
(1)子どもに心を寄せ,あたたかいまなざしで,子どものケアを
(2)教科学習では,大胆に単元を削減し,子どもの学習負担を軽減する
(3)教科外活動では安易に行事の削減などはおこなわない
(4)学年会や教科部会,生活指導部会,児童会・生徒会担当者会議で縦と横のつながりをつくって
§3.具体的なとりくみ
(1)9月から授業再開を想定,受験教科の範囲削減を文科省,都道府県教委へ要望
(2)9月再開を想定した計画  [1]小学校 [2]中学・高校の場合
§4.父母・保護者の理解と合意を
§5.教職員の合意づくりを
§6.今こそ,校長先生はリーダーシップを発揮して
§7.いわゆる「ネット授業」について
§8.おわりに

§1.いつにもまして 子どもとの出会いを大切に―子どもを丸ごと受け止めよう

 安倍首相による全国一律休校要請によって,子どもも教師も2019年度は学年末にふさわしい締めくくりができない状態におかれました。それに引き続く「緊急事態宣言」によって,2020年度の始まりも,新しい年度の始まりにふさわしい出会いができない状態におかれています。

子どもはどんな思いで過ごしているのか

 子どもたちはこの長い休みの間,どのように過ごしているのか,どのように過ごしてきたのか,家庭訪問もなかなかできないもとで,実態そのものもなかなか把握できていない状況におかれているのではないでしょうか。貧困家庭の子どもは,給食もないなかで,ちゃんと食べることができていたのか,ほとんど家の中で過ごしていた子は,大きなフラストレーションをため込んでいたのではないか,長期にわたる休校で,登校拒否・不登校が増えるのではないか,など先生方も不安がいっぱいだと思います。

「よく来たね」と子どもをまるごと受け止めたい

 5月7日(※)に子どもたちと出会えるかどうか,なお不確定要素をもっていますが,こんな状況だからこそ,いつにもまして,子どもたちとの出会いを大切にしたいものです。(※大阪府は5月7,8日も休校と決めたようです 4月27日夕方現在)

 「よく学校へ来たね」という思いを全面に,子どもを丸ごと受け止めたい。子どもの表現を全力を込めて受け止めたい。今年だからこそ,こんなときだからこその「学級びらき」を工夫したいですね。ともすれば,大幅に削減された授業時数のもとで,早く教科の授業を始めなければという気持ちに駆り立てられるのは無理のないことですが,ちょっと立ち止まって,こんなときだからこそ,焦らずに,あわてずに,教室が子どもたちの居場所となるように,教師と子どものあたたかい関係を築けるよう,心を砕いてみましょう。そして,子どもたちどうしのあたたかい関係を築けるよう,子どもたちの心と心をつなぐことを大切にしたいですね。

§2.今こそ教育の専門家としての教師の力の発揮を

 私たち教員は,「私は教育の専門家だ」といつも意識して教育活動をすすめているわけではありません。急に「専門家としての教師」と言われて,戸惑う先生方もいらっしゃるかもしれません。

教師は子どものことを考えて教育活動を計画している

 でも,ちょっと考えてみてください。たとえば,先生方が授業を構想するときには,「この単元で一番大切にしなければならないことは何だろう,この文学教材では,子どもたちにこんなことを読み取らせたいな」と子どもの顔を思い浮かべながら,考えているのではありませんか。また,こんな発問をしたら,子どもたちが活発に発言できる授業になるのではないか,と考えているのではありませんか。

 教科外活動では,運動会で子どもたちが力を合わせてとりくめるには,どんなことが必要だろうか,子どもたちが感動する文化祭をつくりあげたい,子どもたちの笑顔がはじけるお楽しみ会にしたい,などと考えてとりくんでいるはずです。

 それが,教員の専門性に他なりません。その専門性を発揮して教員は教育活動にとりくんでいるのです。そのことが教員は教育の専門家であることを示しています。こんなときだからこそ,私たちのもつ専門家としての力を大いに発揮しましょう。
 では,その力をどのように発揮すればよいのでしょう。次から考えていきたいと思います。

(1)子どもに心を寄せ あたたかいまなざしで 子どものケアを

 休校中,子どもたちは,さまざまな過ごし方をしたことでしょう。多くの子どもたちは,友だちにも会えず,いっしょに遊ぶこともできず,仕方がないので,スマホやゲームで寂しさを紛らわせざるをえない毎日だったのではないでしょうか。父母・保護者のみなさんも,自分自身の仕事の悩みを抱えながらの子どもへの対応で,おそらく疲れておられることと思います。

不安の中でも子どもたちは頑張っている

 何よりこのコロナ禍で,大人もふくめてですが,「人とかかわること=危ない」という風潮がつくられていることが大変気になります。何気ない会話をしたり,親しい人と食事をしたりする,普段なら当たり前のことを控えなければならない状況は,大人でさえ追い詰めていくものです。

 ましてや子どもの場合,大人以上に寂しいし,怖いし,不安なのだろうと思います。普段なら,何か心配事があったとしても,友だちと遊んだりしていると,その心配が吹っ飛んでいくこともありますが,長い時間家で一人で過ごしていると不安や心配事が増大してしまいます。でも,子どもたちはがんばっているのです。

学校再開後は あたたかいまなざしで

 子どもが成長・発達するうえで,人に触れ合うこと,そのときに漂う雰囲気や空気感はとても大切なものです。この休校中も,先生方は,そうした子どもたちに思いをはせ,できる限りのとりくみをすすめられたことと思います。

 学校が再開されたら,中には「荒れ」る子どもも出てくるかもしれません。登校しぶりの子も生まれてくるかもしれません。余裕をもって,子どもを見ることが求められると思います。そして,何よりもあたたかいまなざしを注ぎましょう。それも教師の専門性の重要な部分です。どの子も,何らかの形で傷ついているのです。その子どもたちに心を寄せ,しっかりケアしていきましょう。

(2)教科学習では大胆に単元を削減し 子どもの学習負担を軽減する

 教科学習では,その学年の子どもたちに本当に身につけさせたい力とは何か,考え抜きましょう。そして教科書を読み,子どもたちに「これだけは」という単元や教材を選りすぐりましょう。そうすれば,逆に,これは削除しよう,軽く扱おう,という単元や教材が見えてきます。そういう単元や教材は,思い切って大胆に削減しましょう。

次の学年で教えることも視野に

 また,次の学年で力を入れて教えてもらおうという単元や教材がでてきます。それは,次の学年でしっかり指導してもらうようにしましょう。6年生の場合は,特に教科としての「外国語」などは,中学でしっかり指導してもらうこととし,小学校では,「英語嫌いをつくらない」を目標にとりくみましょう。
 そうして,選りすぐった単元と教材で,今年度の教育計画を組み立ててみましょう。どのような計画になるかは,後に具体的に例示したいと思います。

そもそも授業時数の確保が必要では?と思う方はコチラを

(3)教科外活動では安易に行事の削減などはおこなわない

 子どもたちは,教科教育だけでなく,教科外の活動をとおしても大きく成長します。たとえば,運動会や遠足などの学校行事をとおして,全力をあげることの大切さや,力を合わせることの大切さ,自分たちで考えることの大切さなどを,実際のとりくみをとおして学びます。一つの行事を終えたら,子どもたちが見違えるように成長した姿を見せたという経験は,多くの先生方がもっておられると思います。

行事等は「総合」に位置づける

 だから,「授業時数確保」などという口実で,学校行事などを「初めに削減ありき」としないことが大切です。
 まずは,学校で大切にしてきた自治活動,自主的活動,学校行事を選りすぐりましょう。それを特別活動はもとより「総合的な学習の時間」に位置付けること,教科との関連を持たせることもふくめて,どのように時間をつくりだすかについて,知恵を絞りましょう。

 「総合的な学習の時間」について,学習指導要領では,「指導計画の作成と内容の取扱い」で,「教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習や児童の興味・関心等に基づく学習を行う」あるいは「他者と協働して課題を解決しようとする学習活動」「グループ学習や異年齢集団による学習などの多様な学習形態」などと述べられています。これを活用すれば,教科外活動を「総合的な学習の時間」に位置付けてすすめることが可能です。大いに工夫したいものです。

(4)学年会や教科部会 生活指導部会 児童会・生徒会担当者会議で縦と横のつながりをつくって

 今述べてきたことを,まず一人で考えることも大切です。でも一人だけよりも,まわりの先生方といっしょにとりくめたら,もっといいですね。ですから,上述したことを学年教師集団でとりくんでみましょう。

学習指導要領通りでは子どもも先生もパンク

 ただでさえ,新学習指導要領は究極の詰め込みとなっているのに,そのうえ,削減された授業時数を何の工夫もせずに指導書に書いてある時間通りそのまま上乗せなどすると,子どもの学習負担は極限を超え,先生方の働き方も極限を超え,子どもも先生方もパンクしてしまうことは,だれが考えてもはっきりしているのではないでしょうか。

 だからこそ,学年会で「子どもにとって大事なことを絞り込んで教えましょう」と話し合えば,一致点が見いだせるのではないでしょうか。これができれば,しっかりとした横の連携をつくることができます。

 

教科部会で縦の連携 学校運営組織をフル活用

 また,教科部会で話し合うことも大切になってきます。たとえば,算数では,新学習指導要領では2年生で3分の1を教えることになっていますが,そもそも無理な話です。だから,それは,2年生ではなく3年生で教えましょう,また,割合も4年生から出てきますが,それは5年生でしっかりやりましょう,ということになれば,縦の連携をつくることができることになります。

 教科外学習については,子どもたちの成長をはかることのできる教育活動について,生活指導部会や児童会・生徒会担当者会議などで教師集団として考えることができると思います。
 このように,学校運営組織をフルに使って,教育課程づくりにとりくむことが必要なのではないでしょうか。

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登校拒否を克服する会 第204回交流会 中止

第204回 登校拒否を克服する会 大阪交流会

日時 2020年5月17日(日) 開催中止となりました。
場所 エル・おおさか6階(大阪府立労働センター 天満橋駅下車)
資料代 500円

全体会 「親も子も自分を生きる」ー登校拒否・不登校と自己肯定感ー
講師 高垣忠一郎さん(心理臨床家 立命館大学名誉教授)
分散会

詳しい内容はコチラから