2020年5月26日 大阪教育文化センター事務局
指導内容 複数学年にわたって教育課程を編成
文部科学省は5月15日,「新型コロナウイルス感染症を踏まえた学校教育活動等の実施における『学びの保障』の方向性等について(通知)」を出し,その中で「令和3年度又は令和4年度までの教育課程を見通して検討を行い,学習指導要領において指導する学年が規定されている内容を含め,次学年又は次々学年に移して教育課程を編成する」と述べています。
このこと自体は,新学習指導要領が示す教育内容を,これまでのように何が何でも子どもと学校に押しつけようとするものではなく,2・3年の幅を持たせて,すすめようとするものであり,以前の学習指導要領押しつけ路線では今の事態は打開できないことのあらわれとみることができるでしょう。
ありえない 小学6年・中3の除外
しかし,上記の内容が,「今年度在籍している最終学年以外の児童生徒」とされていることは問題です。つまり小学校6年生と中学校3年生は,上記の内容が適用されず,新学習指導要領が示す教育内容を,長期に休校がおこなわれたにもかかわらず,残りの日程で指導せよということになります。
これはいくら何でもおかしいのではないでしょうか。小学校6年生と中学校3年生が,その他の学年の子どもたちと違って,詰め込んだら詰め込んだだけ受け入れることのできる特別の能力の持ち主だとでもいうのでしょうか。そんなことはありえないことです。
教育課程編成をおこなうのは学校
そもそも教育課程編成をおこなうのは,学習指導要領総則1の1で「各学校において…教育課程を編成する」と述べているように,学校なのですから,最終学年の教育内容をどうするかについても,学校の教育課程編成に任せるべきです。そうすれば,学校はそれを受け止め,知恵を絞ることができます。私たちの「提言」で述べたように,小学校6年生であっても,中学校3年生であっても,「子どもたちにとって大事なことを絞り込んで,教育内容の大胆な削減」をおこなうことは可能です。その場合,どうしても6年生で身につけておくべき内容は,しっかりと時間を取り,中学校でも学ぶ内容は,6年生では大胆に削減し,中学校で力を入れて教えてもらうようにすればいいのではないでしょうか。
小中連携をふまえて「持ち越す」ことも
私たち大阪教育文化センターは,すでに「大阪教育文化センターだより」143号(2020年3月26日付)で,以下のことを提案しています。
「小中一貫」や「小中連携」を活用することも可能ではないでしょうか?とかく無駄な会議をやらされることも多い「小中一貫」ですが,これを活用して,例えば,小学校で教え残しがあった場合,小学校で無理することなく,中学校で指導してもらうようお願いし,合意をつくることもできるのではないでしょうか?それは,子どもの実態をふまえた本来の意味での「小中連携」になると思います。 |
以上をふまえ,小学校6年生の算数をどうするかについては,以下で示しています。ぜひ,ご検討ください。
高校入試・大学入試等へは試験範囲の削減を
中学校3年生の場合は,高校受験との関係があるので,すでに「提言」で,以下のことを提案しています。
今年の高校3年生,中学3年生の多くは来年に上級学校への受験を控えています。各校長会や進路指導協議会が中心となって,文科省,都道府県教委へ受験教科(それ以外の教科も)に対する教科書の試験範囲の削減を具体的に申し入れること。例えば,数学では中学3年生は後半で学習する円の性質,三平方の定理,標本調査(統計分野)の削減,高等学校数学Ⅲでは試験範囲を微分法までにし,積分法以降は試験範囲から外すことなど。 |
これらを具体化すれば,中学校3年生に過大な負担を課すことなく,受験への不安もやわらげることが可能なのではないでしょうか。これもご検討ください。
【追加】小学6年算数・中学3年数学について
【小学6年算数】89時間。中学校から下りてきた「文字と式」「資料の調べ方」などとあわせ,中学校と関連する学習内容を削減すれば,分数の乗除と割合(比とその利用)しか残りません。「対称な図形」「円の面積」「立体の体積」「比例と反比例」「図形の拡大と縮小」などは基本的なことを中心に,時間があれば深く学ぶようにします。
なお,これから分散登校が続くようであれば,
①くりあがり・くりさがり ②かけ算九九
(プリント・動画は 数教協■さんすうしぃ!■参照)
③分配法則を使用しない計算の順番
④将棋盤(オセロゲームなど)と碁盤(座標)のちがいやマス目の数え方
⑤角の大きさのとらえ方などを復習します。
【 中学3年数学 】■中3数学の授業計画はコチラ■
(【提言】§3具体的なとりくみ(2)9月再開を想定した計画[2]中学・高校の場合)