大阪教文センターだより144号(4月24日)新年度ご挨拶

大阪教育文化センターだより144号(4月24日)より

新年度のご挨拶

戸惑いと不安と恐れのなかに希望を見いだす

大阪教文センター代表 福田敦志

「未知の状況」のもとで

 この4月から全面実施となった新しい学習指導要領をめぐる議論のなかで、「新しい時代に必要となる資質・能力の育成と、学習評価の充実」が肯定的な立場からも批判的な立場からも幾度となく言及され、論議されてきた。そのなかでもとりわけ、「新しい時代に必要となる資質・能力の育成」を構成する「学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性等の涵養」「生きて働く知識・技能の習得」「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成」の三位一体の提起は、多様な論議を巻き起こしてきた。
 いまわたしたちは、この提起を主導した人びともおそらくは想定していなかったであろう、「未知の状況」のなかに居る。
 この「未知の状況」下において、さらには緊急事態宣言が発出される状況下において、わたしたちは「専門家」たちから発せられる情報(時にそれは、朝令暮改でさえあるものであるが)を受けとめることに精一杯となり、その情報を疑うことなく「主体的」に振る舞うことが求められ、「対話的」に確かめ合うことは「濃厚接触」として咎められ、本当に大切にすべきことは何であるかを「深」く考える機会を奪われているかのようである。

私たちの眼差しに映るものは

 知らず知らずのうちに自分の頭で考えることを放棄してしまうような状況に陥ったとき、心ある教師たちは、身近な生活現実を見つめるまなざしを研ぎ澄ませ、そこに潜む問題を的確に表現する言葉を探し求めながら、目の前の苦境と歴史的かつ社会的な状況とを結びつけ、為すべきことを見いだしてきた。
 翻って、わたしたちの身近な生活現実を改めて見つめ直そうとしたとき、わたしたちのまなざしには何が映るだろうか。わたしたちの耳には、何が聞こえてくるだろうか。
 それは、働く権利を奪われ、生活の糧を奪われた人びとの怒りや嘆きであろうか。
 それは、親密圏のなかで逃げ場を失い、恐怖に震える声であろうか。
 それは、過剰な責任を一身に引き受けるも、その責任を背負うための手立ても休息も得られないまま疲弊していく、保育士や学童保育の指導員たちの声なき声であろうか。
 これらの声のなかから、子どもたちの声は聞こえてくるであろうか。子どもたちは、声を発することすら奪われてはいないだろうか。声として発せられることなく、誰にも受けとめられない思いは、子どもたち自身の心と身体を傷つける刃となってはいないだろうか。

今 大切にすることは

 子どもたちが生きる現実への認識が深まれば深まるほど、いま、何をこそ大切にしなければならないかが明確になってこよう。少なくとも、「いま、大切にしなければならないことは何であるか」を議論する機運を意識的に高めていくことは可能であろう。それゆえに、この「未知の状況」は千載一遇の好機である。いまこそ、民主主義を現実に展開していく好機である。
 子どもたちと再会が果たされた際に教師として、学校としてなすべきことは何であるかを吟味し、合意していく時間と空間を意識的に創りだしていこう。その先にこそ、子どもたちの存在を歓待し、祝福する学校が生み出されてこよう。

学校を自分たちの知恵と力で創りはじめる年となるよう

 「2020年は、子どもたちと教師たちが生きるに値する学校を自分たちの知恵とちからで創りはじめた記念すべき最初の年であった」-後世の教育史にそう描かれることも、夢物語ではない。今年度が終わる頃には、学校づくりの魅力的な実践報告が溢れるほどになされるような、そんな一年を仲間と共に、子どもたちと共に、地域の人びとと共に創りだしていこう。
 そうした実践を支え、励まし、理論化していく拠点として大阪教育文化センターもさらに発展していくという覚悟をここに記し、新年度を迎えたみなさんへのご挨拶と代えさせていただきたい。今年度もよろしくお願い申し上げます。

【内容】
新年度ご挨拶       大阪教育文化センター代表 福田敦志
第30回大阪教文センター共同研究集会の感想「子どもの存在そのものが希望」
緊急事態宣言下の自粛要請の中で

教育講座(5月16日 13時半) 緊急事態宣言後も休校が続く「こんなときだからこそ,子どもをまるごと受け止めたい〜今年の学級づくりと授業づくり〜」本講座は延期となりました

 

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