●学校づくりと教職員研究会
私たち「学校づくりと教職員研究会」では、2021年度から2023年度まで、科学研究費の助成を受け、「学校で教員が育つには -教員評価システム、管理職の役割、研修のあり方の観点から-」をテーマに研究を進めています(2024年度まで延長の予定)。
本年度は、教員の専門性、専門職性について深く議論してきました。その中でも、いくつかのキーワードが問題になりました。一つ目は「ケア」です。学校教育の目的もしくは学校教育の目的を果たすための手段として「ケア」の役割が大きくなっているのではないかという議論が行われました。ただ、医療や看護、介護や保育で使われている「ケア」という言葉と学校での「ケア」の違いは何なのか、「ケア」という言葉を安易に使っていいのか、現時点では結論が得られていません。
二つ目のキーワードが「教員の資質能力の向上」です。教員評価において目的の一つになる「教員の資質能力の向上」ですが、そもそも資質能力という概念が新自由主義の産物であり、その概念の欺瞞ともたらす悪影響が議論されました。
三つ目のキーワードが「関係性」です。学校づくりや教員の専門性、専門職性を考えるにあたって、教員が子どもや保護者、同僚や社会と結ぶ関係性が重要であり、資質能力概念は、学校づくりや教員の専門性向上のために、関係性の重要性を軽視することになることが議論されました。
これらの議論をふまえて、今後、「教員はどのように成長していくのか、またそこで得られる教員の専門性とは何か」について、教員がこれまでの経験を通して、どのように教員として成長し、どのような考えを持つようになったのか」を明らかにする調査を計画しています。教員としての経験を振り返り、成長したきっかけや出来事、どのように成長したかを調べることによって、教員が自らの成長や教員の専門性をどのように捉えているのかを明らかにし、それらを促していくために何が必要なのかを明らかにして、これからの学校づくりや教員のあり方を示していきたいと考えています。