2023年度 各研究会のとりくみ

●集団づくり研究会 一年間の取り組み
 集団づくり研究会では、一年間世話人である私の学級を追跡しながら研究を行ってきました。今年度は初めて6年生の担任を持つことができ、学級会を中心とした集団づくりに取り組んできました。今年度の集団づくりでは、まず組織づくりを意識して取り組みました。学級会を行う前に各班から班長を決めて班長が班の意見を吸い上げ、その意見を持って班長会議を行い学級会での議事や提案を決めてから学級会を行うことを続けていきました。
 この方法で学級会を続けていくと、子ども達からは生活の中でふとした改善点が出てきました。例えば、私の学校では、UDの観点から時計が後方にしかついていません。そのため給食の時に後ろを見ないと時間がわかりません。なので給食の時にタイマーを設置したいという意見が出てきました。学級会に議題として上がると、給食中のタイマーに関しては、一回一回セットするのも面倒という意見が出てきました。みんなでたくさん議論した結果、授業中の時間確認も含めて時計を前にすることで解決するのではという意見が出て、この意見に賛成の意見が多く、それで試してみようと決まりました。UDの観点という話もあったので担当の先生に確認してみると「子どもが決めたのなら変更するのもいいのではないですか」と言われたので前に時計を設置することができました。本当に何気ないことなのですが、今の現場では何気なく決まって疑問も持たずに進んでいることがあると思います。子どもたち自身が自分の生活を見つめなおし要求が実現することをきっかけにいろんな要求が出てきました。
 また、5月の遠足の際には緊急提案が出てきました。それは、私が雨男のため晴れの予報で来ていた遠足の日がだんだん雨の予報に変わりつつあり、心配なのでてるてる坊主を作りたい要求が出ました。学級会の時間をてるてる坊主製作の時間に充てていいか全体に確認の上、実施しました。一人一個テルテル坊主を作りました。中には1mほどある巨大なてるてる坊主(大魔神)を作る子も出てきてわきあいあいとしながら、遠足に備えました。遠足当日は、数日前に雨の予報だったはずが一変し、暑さを気にするレベルの快晴でした。みんなの不安を大きく払拭したてるてる坊主の力を感じました。「てるてる坊主効きすぎちゃう」「大魔神が大きすぎたかな」と笑いながら遠足に向かいました。
 このように組織づくりを中心にした学級会を行うことで、要求が出やすい学級に変化したように思います。それは、学級や班長・班などの「組織」と組織の意見や要求を出すための学級会や班長会議のような「機関」があることによって要求が出せる学級になったのではないかと意見をもらいました。また、出せるだけではなく、その要求が実現する経験を重ねることによって「出やすい」集団に育っているのではないかと意見をもらいました。集団づくりにおいて学級会の価値と組織づくりの重要性を確認することができる研究になったのではないかと思います。
 しかし、この研究を通して課題も見えました。実際に組織を作り、運営を行っていこうとすると今の現場では、班長会議を取る時間がないことや行事に圧迫されると学級会を行うことができない現状が見えてきました。今の現場には、授業内容の増加・教科担任制・休み時間の短縮化・放課後の下校時間が早くなることなど学校の中のたわみがなくなり、豊かな実践が行いにくくなっていることがわかりました。
 このような現状の中でも子どもの声を大切にすることで豊かな実践を生み、今の現状を打破できる実践の共有と研究を本研究会では行なっていきたいと思います。
 

●教育課程研究会
 子どもの実態からスタートする教育課程の民主的編成のあり方を研究課題としている。
 本研究会では昨年度に引き続き、中学校の現場から、文化活動の実践とそれに伴う子どもたちの実態が報告された。子どもたちが文化活動を通して確かに成長している姿を再確認することができた。一方で、統一テストや目的が不明慮な校内研究授業、過密な行事スケジュールによって、やりたいことが教師も子どもたちも実現しにくく、ふりかえりの時間すらもとりにくい状況が見えてきた。アフターコロナと呼ばれる時期の現場で、多くの学校が元あった行事を「もどす・なくす」の選択に迫られている。本当に子どもたちの成長のために必要な行事を残していくためには、子どもたちも教師もゆとりをもち、文化的行事を継続できる教育課程の編成が大切であると考えた。
 今後は、参加している現場職員の小学校や他地域の中学校の教育課程で比較しながら、どのように行事をあてはめ、教育課程を編成していけばよいか考えていきたい。研究者、現場職員、学校外の教育活動に関わられている方など多様な参加者の立場の視点があることを生かして、研究活動を進めていきたい。