「GIGAスクール構想」のイラスト図解

大阪教育文化センター ブックレット刊行

「GIGAスクール構想」光と影、教育の展望
―「個人の尊厳」を守り、教育保障を前進させるICTの活用へ―

ブックレットを読むにあたって,
「GIGAスクール構想」とは何か,
図解してみました。

【「GIGAスクール構想」を理解するためのイラスト図解】

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【教文センターだより157号より抜粋・一部省略】

ものすごい便利なものがやってきた!
学校はどうなる? こうなる!?

子どもに端末一人1台の時代がやってきました。
子どもの端末や保護者のスマホから次のようなことができるとのことです。

お知らせ等は端末・スマホで
【保護者対応】
①欠席,検温の連絡,学校からのお知らせや学級通信等の配信・閲覧(通信の形態もテキストベースと写真に変わる要素あり)
②家庭訪問や懇談の日程調整(自動的に調整できる機能あり)
③アンケートの配信と集計(記号は瞬時に集計される)
④提出物の配信と提出状況の把握(電話や連絡帳でやっていたことが端末に置き換わる)
⑤オンラインでの学級懇談会・PTA会議(わざわざ学校に出向かなくてもすむ)
⑥部活動の練習連絡(欠席連絡や試合の結果報告も)

子どものあらゆる「データ」を全教職員で共有
【子どもの様子】
⑦子どもはその日の健康状態(「心の天気」など)を入力。担任,養護教諭ばかりでなく,全教職員,管理職や教育委員会まで「見える化・共有化」
⑧子どもに関わった教職員が,その子の「いいとこみつけ」に入力
⑨気になる子どもがいると,学級ボードや児童生徒ボードをクリックする。すると,その子どもの出欠状況,保健室利用状況,活動記録,学習状況など様々な情報が一覧表示される。また「家庭のようす」では,家族構成や連絡先,個別の配慮すべき事項が確認できる(全教職員,教育委員会「見える化・共有化」)
⑩「個別の教育支援計画/個別の指導計画」で,支援が必要な子どもの情報を共有
※「心の天気」=その日の心の状態を,はれ,くもり,あめ,かみなりなどでクリック。雨,雷の状態や欠席・遅刻の場合は,アラートが表示される。

教師用端末で子どもの状態を把握
【授業など】
⑪宿題の配信と提出(写真を撮って提出),提出状況の把握
⑫ノート点検も⑪と同様
⑬テストの採点は答案をスキャンして串刺し採点,記号は自動採点。自動集計と細かい分析。端末で一斉返却(実物の答案も返却か処分)
⑭授業も子どもの表情を見なくても教師用端末を見れば,子どものとりくみ状況や何をやっているのか,全員の様子が窺える
⑮教師から提示された問題を解いたら,端末が説明し,AIが次の問題を提示してくれる
⑯現在,感染拡大に伴って,端末の利用がオンライン授業になりつつある
⑰担任と子どもとの連絡,子ども同士の連絡は端末を通して(チャット,SNS・メールに)

さて,どう感じられたでしょうか。このようなシステムを大阪市をはじめ,多くの自治体が取り入れてきているようです。

端末が(宿題等の)提出点検ばかりではなく,問題が解けた子どもに次の課題を提示してくれる便利さ。これまでPCを,授業プリントやテスト作成,成績処理,たまにプレゼンや動画作成など,いわゆるスタンドアロン的な利用でしか使ってこなかった筆者にとっては,便利な時代になったと正直にも思います。これで随分作業効率も上がるはずです。テストの採点作業はおそらく3分の1になるでしょう。

また,子どもの様子も,一人ひとりの子どもの様子を見るのではなく,端末を見れば瞬時に把握,しかも全教職員が把握し,端末を通して教職員同士が子どもの学習や生活指導で連携できるというのです。
 
私たちはあらゆるところで「監視」されている
私たちは,スマホを持つことによって地球の外からその人の位置を監視され,ネット検索することでその人の嗜好性,思想などが逆に検索されています。また,ハッキングされれば,スマホやPCのカメラからコチラの様子をのぞかれることもあり得る時代になっています。そしてそのスマホに,住民票など行政に手渡しているデータやクレジットカード・銀行口座,病院の診断履歴などが紐付けされるとなったら,みなさんはどう思いますか。

今,子どもたちはどうか。今後「GIGAスクール構想」がすすんでいけば,一人ひとりの子どもの保健上のデータや行動の記録,学習成績ばかりではなく,端末を利用すればその時におこなっている操作や状態が「スタディログ」としてクラウドに保存されていくことになっていきます。端末を利用すればするほど,子どもたちの1日の行動や学習記録がクラウドに蓄積されていきます。

内閣府の調査(令和3年3月)によれば,6歳児のインターネット利用率は7割を超えています。今後「子ども一人1台の端末」でその利用率は100%に近づいていくことでしょう。そうして,子どもの学習履歴(ログ)や生活行動や健康の記録とともに一人ひとりのデータがクラウドに蓄積されていきます。
これを誰が管理するのでしょうか。少なくとも,その人自身ではありません。

大阪教文センターが刊行するブックレット『「GIGAスクール構想」光と影,教育の展望―「個人の尊厳」を守り,教育保障を前進させるICTの活用へ―』は,「GIGAスクール構想」のねらいや本質を鋭く言及しています。その上に立って,憲法や国連「子どもの権利条約」の視点に立ち,教職員,子どもたちや保護者がともに考えあい,「21世紀の日本の教育」をつくっていこうという提案の第1弾です。