吹田の両退職者会が連名で「チャレンジテストの問題点に対する意見書」

吹田市の教職員の退職者組織の代表が連名で吹田市教育委員会に「チャレンジテストの問題点に対する意見書」を提出しました。日教組系と全教系の組織が力を合わせました。

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2017年1月6日
吹田市教育委員会
 教育委員長  谷口 学 様
 教育長    梶谷尚義 様

吹田市教職員退職者会会長 岩田 勝
吹田市退職教職員の会代表 辻口 隆

チャレンジテストの問題点に対する意見書

 大阪府教育庁は、昨年6月23日(木)に中学校「チャレンジテスト」を中学3年生に実施し、中学1・2年生は、昨年に引き続き、本年1月に実施するとしています。またこの結果が、今春の高校入試の調査書評定に利用され、今後、中学1・2年生の内申点も高校入試に反映することが決定されています。このことは、次のような問題点があると私たちは考えます。

(1)中学3年「チャレンジテスト」の結果で各中学校が格差づけされます。

 中学3年生では、6月23日に実施されたテストの結果によって、各中学校の調査書評定平均が決定され、評定平均の高い学校は高い評定が多く出るように、低い学校は低い評定が多く出るようになります。これでは通う中学校の格差を一人一人の生徒に背負わせることになり、生徒のがんばりが反映されなくなります。

(2)高校入試における内申書の意味がなくなります。

 中学1・2年生の調査書の評定は、たった1回のチャレンジテストの結果で評定の変更が余儀なくされる場合が起こり、これでは、各学校が責任をもって日常の学習成果をもとにした絶対評価の評定が意味のないものになり調査書の意味がなくなります。
 このことは、府教育庁が生徒の学習意欲を高め、個人の努力が反映されるようにと、絶対評価の徹底を入試の調査にも導入したことを否定することになります。

(3)地域社会にもゆがみをもたらします。

 チャレンジテストによって中学校のランクづけが生じ、当該校で学ぶ生徒を初めとして卒業生地域住民が学校に寄せる愛着を失わせ、越境入学という弊害も含めて地域のつながりを崩壊させることにもなります。

(4)府校長会も要望書を提出しています。

 大阪府公立中学校長会の要望書(平成28年度)には、今回の制度改革はあまりにも拙速であると次のように指摘されています。「高校入学選抜方法について、調査書に記載する評定については、各中学校に委ねられたい。新たに制度設計を行う場合は、早急かつ事前に本校長会に提示し、意見交換の場を設けるなど、制度設計について十分な時間をかけ、周知してから実施されたい。」

 又、貴教育委員会は、吹田市議会での質疑で、これらの問題点を課題として認め、「中学校の教育活動に与える影響に十分配慮したものになるよう、今後、大阪府教育庁に提言していく。」と答弁されており、大変心強く感じています。

 すでに実施される中で、生徒たちから、「俺たちテストに参加しない方がいいかな」といって休んだり「通っている校区によって内申書に差が出るなんておかしい」などの声が出ている事もふまえ、貴教育委員会が、大阪府教育庁に対して意見具申されるよう強く要望致します。

以上

  

千早赤坂村議会、全会一致でチャレンジテストの廃止撤回求める意見書議決

大阪府南河内郡千早赤阪村議会は2016年12月20日、全会一致で次の意見書を議決しました。

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中学校「チャレンジテスト」廃止・撤回を求める意見書

 大阪府教育庁は、大阪独自のチャレンジテストを導入し、今年6月中学校3年生を対象に実施した。1・2年生には来年1月に実施するとしている。この結果を高校入試の内申点の評定に利用し、今後、中学1・2年生の内申点も高校入試に利用するとしている。このチャレンジテストに対して、教職員や保護者、教育関係者から大きな問題点が指摘されている現状がある。

 第ーに、「チャレンジテスト」の結果で各中学校が格差づけされ、不公平な入試となる。

 中学3年生では6月に実施されたテストの結果を用い、各中学校の調査書評定平均が決定され、昨年度の例では、評定平均が上位の中学校で「3.7」、下位の学校では「2.2」という学校もあり、調査書の評定平均の差が大きく聞いており、通っている学校によって調査書の評定に差がつくため、高校入試がきわめて不公平になる。

 第二に、高校入試における内申書の意味がなくなる。

 中学1・2年生では、たったl聞のチャレンジテストの結果で、府教委作成の「評定の範囲」により、各学校での評定の変更が余儀なくされることとなり、各学校が責任をもって日常の学習成果をもとにつけた絶対評価の評定が否定され、子ども・保護者に説明できなくなる。生徒の学校での日常の努力や頑張りが反映されないのであれば、調査書の意味がなくなる。

 第三に、子どもたちを中学1年から高校入試にかりたて、中学校教育を大きくゆがめことになる。

 チャレンジテストによって実質上、調査書の評定が決定されることになれば、チャレンジテストが入試と同様の重みをもつことになり、入試が前倒しされることになる。人間形成の場である学校が、テスト中心の学校となり、子どもたちを中学1年から過度の競争にかりたて、本来あるべき中学校教育の姿が大きくゆがめられることとなる。

 以上の趣旨から、下記について強く要望する。

一、学校教育を大きく歪め、子どもたちを過度な競争に駆り立てるチャレンジテストは、廃止・撤回すること

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

                       大阪府南河内郡千早赤阪村議会

(2016年12月20日可決)

  

行政調査で学校を縛ることの是非

 大阪大学大学院の小野田教授が、教育専門紙「内外教育」2016年12月16日付けに「中学校生活を支配するチャレンジテスト・大阪」と題する文章を寄せています。

 小野田教授は、その文章の中で、学力テスト裁判最高裁大法廷判決(1976年5月21日)を引用し、行政調査には歯止めがあり、教育活動とは区別されるべきとの判決が確定していることを紹介しています。

小野田教授の学力テスト裁判最高裁大法廷判決(1976年5月21日)の引用部分を紹介します。

 学力調査(※学テ)としての試験は、あくまでも全国中学校の生徒の学力の程度が一般的にどのようなものであるかを調査するためにされるものであって、教育活動としての試験(※中間や期末考査)の場合のように、個々の生徒に対する教育の一環としての成績評価のためにされるものではなく、両者の間には、その趣旨と性格において明らかに区別があるのである。それ故、本件学力調査が生徒に対する試験という方法で行われたことの故をもって、これを行政調査というよりはむしろ固有の教育活動としての性格をもつものと解し、したがって地教行法54条2項にいう調査には含まれないとすることは、相当でない。もっとも、行政調査といえども、無制限に許されるものではなく、許された目的のために必要とされる範囲において、その方法につき法的な制約が存する場合にはその制約の下で、行われなければならず、これに違反するときは、違法となることを免れない

(※注や下線は小野田教授)

教育委員会が実施主体となる調査は「行政調査」であって、学校教育活動とは区別されるべきものと小野田教授は指摘している。

小野田教授は最後に次のように、とどめのを刺している。

 また、「公平性」を謳うが、国立中学3校と私学64校(中3生で1割強)には適用されない。


 小野田正利教授が執筆している連載「普通の教師が生きる学校 モンスター・ペアレント論を超えて」シリーズの258回目。教育専門誌「内外教育」は時事通信社が週2回発行する新聞です。教育委員会や管理職テスト受験者に読まれています。

  

高校入試に学テを利用?

高校入試に学テを利用? 2016年12月8日

高校入試に学テを利用?「全国学テ」を内申書へ反映?

大阪教育文化センター「学力問題研究会」のパンフレット「どの子にも学ぶ力とよろこびを」のp12~14を紹介します。全文はパンフレットをご覧下さい。(案内はこちら)


 2015年4月10日、「全国学テ」の学校別調査結果を高校入試の内申に反映すると、大阪府教育委員会が決めました。「大事なことがなんでこんなに急に決まるの?」と生徒たちが驚くなか、11日後の4月21日に「全国学テ」が実施されました。

 大阪府の方式は、「全国学テ」の結果をもとに各校のレベルを把握し、学校がつける内申点の平均が、そのレベルに応じて指定する範囲に収まるようにするものです。成績の良い学校はより多くの生徒に高評価をつけられ、逆の学校は評価を低く抑えられることになります。(下記資料「朝日新聞」2015年12月4日付)

 大阪方式は、教育施策や教育指導の改善という本来の「全国学テ」の趣旨から逸脱していると、7月に文部科学省専門家会議で指摘されました。その会議では、入学者選抜に利用されれば、各校の事前対策が増えることも指摘されました。内申書反映で起きたことこれまでとは違い、「全国学テ」の結果が高校入試に影響することによって、生徒へのプレッシャーが強まりました。今年度の「全国学テ」の中学3年生の結果は、これまでどの科目も40位台がほとんどだったのが、数学A、数学Bは20位台、国語Bは30位台に上昇しました(下記資料「校種・教科・区分別正答率比較/対全国比経年比較」表および折れ線グラフ)。

 文部科学省専門家会議でも指摘されているような事前対策(過去問練習など)がより強まり、日々の授業がないがしろにされる恐れがよりいっそう強まります(資料「こんなにテスト潰け2015年度の中学校年間計画」)。その後、11月24日には、文部科学省が入試への使用禁止を次年度の実施要領に明記する方針を決め、大阪府教育委員会は、次年度から中学3年生の府独自テスト「中3チャレンジテスト」を新設することを同月27日に決定しました。

(※編集部注 2016年度からは、6月に3年生の府チャレンジテストが追加。大阪市ではさらに10月に3年生の市統一テストが実施され、その結果で内申書が決まる。実力テストや定期試験は各校によって実施回数は異なる)

学校間の際限ない学力獲得競争が…

 今年度の「全国学テ」にしろ「中3チャレンジテスト」にしろ、大阪方式は学校別調査結果を反映させるものであるため、いわゆる成績のよくない子どもを学テ実施日に欠席させるなどの排除が横行する可能性があります。実際に、「賢い子どもだけが受けた方が、自分の学校が有利になる」「○○(学力の低い子ども)が休んだらいい」と教室で発言する子どもがいました。「おまえのせいで学校の平均点が下がり、5をつける人数が減った」「内申点下がったらお前の責任や」と言われていじめられている子どももいます。子どもの学びと人権を侵害し、練習した成果を競うのが、「学力」の評価なのでしょうか。今回の内申反映問題以前から起きている問題は、まだあります。一部の地域では「全国学テ」の調査結果を公表してきました。大阪府のチャレンジテストでは、市町村別の教科別平均得点が一覧表になって公開されました。こうしたことで、学校間の際限ない学力獲得競争が起きているという現実もあります。「きみの(小)学校悪いやんか、うちの学校はいい」「先生、うちの学校あかんねんやろ」と子どもが言っています。子どもの「学力」を評価するはずのものが、学校や教師を評価する道具にもなっているのです。

 そもそも、今年度から大阪府でも導入された「目標に準拠した評価」(絶対評価)は、子どもたちを教えている教師、学校がつくった目標を基準にしておこなう評価です。したがって、学校ごとに異なってくるのも当然です。この評価を入試に用いること自体が難しいという指摘にも耳を傾け、入試制度のあり方を考えなおす時期にきているのではないでしょうか。


 上の文章は。大阪教育文化センター「学力問題研究会」のパンフレット「どの子にも学ぶ力とよろこびを」のp12~14です。全文はパンフレットをご覧下さい。(案内はこちら)

  

【資料】文科省の内申書についての考え方

【資料】文部科学省は「調査書(いわゆる内申書)」とは何か、次のように説明しています。

文部科学省ホームページ  確かな学力 > よくある質問と回答(FAQ)

(以下の出典はこちら:文部科学省のサイト)

Q 指導要録とは何ですか。通信簿(通知表)や調査書(いわゆる内申書)とは何が違うのですか。

 (指導要録・通信簿の説明は省略)

 また、調査書(いわゆる内申書)は、高等学校等の入学者選抜のための資料として作成されるものであり、生徒の平素の学習状況等を評価し、学力検査で把握できない学力や学力以外の生徒の個性を多面的にとらえたり、生徒の優れている点や長所を積極的に評価しこれを活用していくという趣旨のものです。調査書は、各都道府県教育委員会等において、その様式や記載事項が定められています。

----引用終わり---

「学力検査で把握できない学力や学力以外の生徒の個性を多面的にとらえたり、生徒の優れている点や長所を積極的に評価しこれを活用していく」という趣旨です。

「チャレンジテスト」というペーパーテストで内申書を縛るのは、文科省の説明でも誤りは明らかです。

  

高校入試がまったく不公平になります!(一括テキスト版)

ご存知ですか?
高校入試がまったく不公平になります!

画像版はこちらPDF版はこちら署名用紙はこちら

1 チャレンジテストで内申が決まる

※チャレンジテストとは、大阪府内の公立中学校の1~3年生全員(約22万人)が受験。1、2年生は年度末の1月に行い、得点に応じて個人の内申書の成績を変更し、3年生は6月に実施。

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2 お子さんの中学校の内申書は?

 中3のテストでは、各中学校が競い合う団体戦となっています。その結果によって、各中学校全体の内申書評定平均が決まり、平均が高い学校ほど多くの生徒に良い成績がつけられるようになります。逆に低い学校では、頑張っている生徒でも良い成績はつけられません。

※大阪府の「内申点」は5段階評定です

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大問題! チャレンジテスト

① 入試がまったく不公平に

中学3年生では…内申の学校平均「4」の中学校では、「1」はつけられません。

「1」を1人つけると、「5」を3人つけないと平均「4」になりません

「5」「4」ばかりの中学と「1」~「3」ばかりの中学が

内申の学校平均「2」の中学校では、「5」はつけられません。

「5」を1人につけると、「1」を3人つけないと平均「2」になりません

=こんな内申点では希望校にいけない

〈えっ!?本当〉

①6月のテストで、その後3月までの1年間の、各学校の内申平均が決定されます。(6月以降に、いくら頑張っても反映されません)

②5教科のテスト結果で、テスト教科外の「音・美・体・技家」の内申平均も決定されます。(体育や音楽などが優れていても反映されません)

内申書の比重はとても大きい

高校入試は、学力検査(450点)+内申書(450点)の900点満点で決まります。

内申書の評定が1ランク下がると、当日の入試で、10点下がるのと同じ(学力検査と調査書の比率が半々の場合)

合否判定のしくみ

※各高校が、学力検査と内申書の比率を決めます
(7:3,6:4,5:5,4:6,3:7の5タイプがあります)
学力検査:調査書(内申書)が5:5の高校では

●入試当日の学力検査……450点満点
(国・社・数・理・英各教科90点×5=450点)

●各学校からの調査書……450点満点
(国・社・数・理・英・音・美・体・技家
5段階評定の内申点×10点  各教科50点×9=450点)

合計900点満点で合否判定されます

② 学校でいくら頑張っても…

-中学1・2年生では、チャレンジテストで、1人ひとりの内申点が決まります-

 府内の中学校は大混乱しています。学校が責任をもってつけた成績が、チャレンジテストの結果によって変えさせられる事例が、府内各地で1万件をこえています。

 「英語の評定が1学期に『4』、2学期に『4』であった生徒の内申書評定が『2』に落とされた」など、たった1回のテストで1年間の評定がひっくり返されています。

 ある市では、内申書変更に対する府教委への協議の申し出が700件をこえましたが、まったくの門前ばらいにされました。

各学校で生徒の成績が、次々と……(例)

  *府教委作成、H27年度「評定の範囲」より

中1 英語の場合

 テストで50点以下をとると「3」、26点以下で「2」に下げられます。(学校の成績評定が「4」以上でも)

中2 国語の場合

 テストで83点以上とると「5」、71点以上で「4」に上がります。(学校の成績評定が「3」以下でも)

内申書の成績を学校で決定できない?

〈子ども・保護者に説明ができない〉

 各学校が責任をもってつけた1年間の成績が、たった1回のテストによって、むりやりに変更させられ、日常の授業やとりくみで、いくら頑張っている生徒であっても正当に評価することができません。「なぜ、こんな評定になったのか?」子ども・保護者にきちんと説明できないような評定は、内申書の成績にはできません。

内申書が意味のないものに

 学校における、生徒の平素のとりくみが反映されないのであれば内申書の意味がなくなります。

「内申書は何のために?」文部科学省HP Q&Aより

 調査書(いわゆる内申書)は、高等学校等の入学者選抜のための資料として作成されるものであり、生徒の平素の学習状況等を評価し、学力検査で把握できない学力や学力以外の生徒の個性を多面的にとらえたり、生徒の優れている点や長所を積極的に評価しこれを活用していくという趣旨のものです。

テストだけがんばればいい? 大切な友情が…

「子どもを追い立て格差を広げる!」これが教育?

・私、2段階も落ちた

・学校の平均点を下げるから「俺たちテストに参加しないほうがいいかな」(実際に休んだ生徒がいます)

・毎日、テスト対策の勉強ばっかり

・もう転校するしかないな

・通っている学校によって内申書に差が出るなんて…

こどもたちのこんな思いをさせていいの?

中学校校長会は、府教育庁に求めています
「高校入学者選抜方法について、調査書に記載する評定については各中学校にゆだねられたい。」(H28年度大阪府公立中学校校長会「要望書」)

<学校と地域がこわされます>

① くり返しのテストが、子どもと学校に大きなストレスと負担をかけ、教育を大きくゆがめます
② 入試に有利な中学校と、不利な中学校が地域の違いによってつくり出され、学校と地域がこわされます

 各学校のPTAや地域の自治会をはじめ、教育関係者や議会、マスコミなど、府民的な対話と懇談を大きく広げていきましょう。

入試は来年の3月です。まだ間に合います。求めていきませんか?

大阪府教育庁には、「チャレンジテスト廃止・撤回」を
大阪府内各市長さん教育委員会には「チャレンジテストへの参加撤回」を

子どもと教育・文化を守る大阪府民会議事務局(大阪教職員組合内) TEL 06-6768-2330 FAX 06-6768-2239

  

中学生チャレンジテストは廃止・撤回に

 6月23日(木)、中学校3年生「チャレンジテスト」が実施されました。8月末に各中学校に返却された結果により、それぞれの学校の評定平均が決定されています。

 これまで、「大阪教育」5月号・6月号でも問題点を指摘してきましたが、このままでは、高校入試がきわめて不公平なものになってしまいます。
(以下、ピンクのところをクリック・タップすると説明を表示します)

「わかりやすい」府民向けビラが完成しました

教育・文化府民会議作成の、「わかりやすい」府民向けビラが完成しました。
このビラを対話に活用し、廃止・撤回へ運動を一気に広げていきましょう。

教育・文化府民会議が新しく作成したビラ
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許せますか?不公平な入試

 中学3年生の「チャレンジテスト」の結果によって、各中学校がつけることのできる内申書の学校平均が決まります。大阪では、学校間や地域間における平均点の差が大きいため、平均点が高い学校では、内申書の学校平均が「4」を超える一方で、平均点が低い学校では、「2」前後に抑えられるといったようなことが実際に起こっています。学校平均が「4」を超える学校では、内申点のほとんどが「4」か「5」ばかりになりますが、学校平均を「2」前後に抑えられた学校では、「1」~「3」しかつけられません。これにより、通っている中学校によって、高校入試に有利な学校と不利な学校が生まれ、高校入試そのものが、不公平なものになることは明らかです。

本当の成績が評価されない

 さらに重大な問題があります。

① 6月のテストで各中学校の1年間の内申平均が決定されること

② 5教科のテスト結果で、9教科全ての内申平均も決定されること です。

 6月のテストで1年間の内申平均が決定されるということは、6月以降にどんなに頑張っても、その頑張りが内申点に反映されることはありません。そして、5教科のテスト結果で、音楽、美術、体育、技術・家庭の内申平均が決定されるということは、どんなに音楽や体育が優れていても、それが成績に反映されないことを意味します。子どもの一人ひとりの成長を評価する「絶対評価」とは言えません。

子どもたちの人間関係まで…

 「チャレンジテスト」によって、各中学校は高い内申点を獲得するために、学校間競争に駆り立てられています。その結果、子どもたちの人間関係にまで悪影響をおよぼしています。

 テスト前の子どもたちからは、「お前がテスト受けたら、平均点が下がる」「私たちが頑張っても0点とる子がおるしな」「頭のいい人にがんばってもらおう」などの声があがったり、学校の平均点下げるから「俺たちテストに参加しないほうがいいかな」といって、実際に学校を休んだ子がいます。そして、学校のために休むといった子を称賛するようなこともあったと大教組が行った実態調査の中で明らかになってきました。

 このテストによって、子どもたちは過度な競争に駆り立てられ、人間関係までズタズタに切り裂かれる状況に追い込まれています。

絶対できる廃止・撤回!

 大阪府下では、様々な地域で「チャレンジテスト」に関する学習会が開かれています。

 その中で、「中学校の説明会では、こんな問題があることなんかわからなかった。もっと、このような学習会を開いてほしい」「今日の話を多くの人に話して広めていきたい」などの声が多く聞かれます。このチャレンジテストをめぐる問題は教職員のみならず、父母・地域との共同で運動を大きく進めることで、確実に廃止・撤回に追い込むことができます。

「大阪教育」1876号 2016.9.10. 大阪教職員組合発行

  

教育を大きくゆがめるチャレンジテストの廃止・撤回を

教育を大きくゆがめるチャレンジテストの廃止・撤回を 2016年4月10日

許さない!批判と怒りが府内全域から

 くるくると毎年変わる府の公立高校入試に対して、いま府内各地で、批判と怒りの声が大きく広がっています。とりわけ本格実施となった中学1・2年のチャレンジテスト(1月に実施)によって、各中学校が責任を持って行った生徒の成績評定が、無理矢理に変更を強制され、各学校長や地教委をはじめ、府内各地の中学校から大きな怒りの声が噴き出しています。

(以下、ピンクのところをクリック・タップすると説明を表示します)

1 学校教育を否定する1・2年チャレンジテスト

たった1回のテストで評定が下がる

 「英語の評定が1学期に『5』、2学期に『5』であった生徒の評定が、チャレンジテストの点数が44点であったため2ランクも下げられて、内申書の学年評定が『3』に落とされた生徒」など、たった1回のテストで1年間の評定がひっくり返される事例が、府内各地で大量に生じています。

 ある市では、府教委に対する協議申し出が700件を超えたのをはじめ、各学校で1~2割、3割近くに及ぶ学校もあります。各学校の絶対評価では、まじめに頑張っている生徒に「1」などはつきませんが、無理矢理に「1」、「2」をつけられた生徒が続出しています(資料1)。

資料1

チャレンジテストの点数で内申書の評定が決まる(中1・2年)
*府教委、H27年度「評定の範囲」より

●必ず評定が上がる

 ―「中2・国語」では  83点以上「5」、71点以上「4」、56点以上「3」

●必ず評定が下がる

 ―「中1・英語」では 50点以下「3」、27点以下「2」、11点以下「1」

テスト至上主義が教育こわす

 日常の授業でいくら頑張っていても、チャレンジテストで点数をとらなければ高校入試にかかわる内申書の評定は下げられます。逆に、授業態度が悪く、授業エスケープや遅刻をくり返し、提出物や宿題をまったく出さず、定期テストも受けていない生徒であってもチャレンジテストで点数さえ取れば「5」や「4」がつけられます。

 これを生徒たちが知れば、学校を休んで塾でテスト対策をするなど、学校の授業軽視と「荒れ」が必ず広がります。

 いま大阪では、全国でも突出した深刻な「荒れ」と教育困難に直面していますが、これに油をそそぐものです。

全くの、相対評価に

 府教委はこの間、生徒の学習意欲を高めるため、個人の努力がそのまま反映されるとして絶対評価の徹底をすすめてきました。ある研修では、「ペーパーテストでの評価の割合は4割以内にし、残りの6割は授業態度や発表、提出物等で評価するように」とまで指導してきました。

 それが、たった1回のチャレンジテストで、全てひっくり返されるわけです。

 府教委は、内申書の評定を絶対評価に変更すると主張しながら、実際には「公平性を担保する」という口実をつけて、府全体の中学生を対象とした究極の相対評価を強行しているわけです。これは子どもや父母・府民を全くだまして、愚弄するものです。

 各学校の教育評価の趣旨を大切にして、内申書を絶対評価に変更するというのであれば、その趣旨を貫き、チャレンジテストは直ちに廃止すべきです。大阪以外にこのような大混乱を引き起こしている都道府県はどこにもありません。

2 内申書の評定は、各学校に委ねよ

 一人ひとりの子どもの教育に直接責任を負い、その成長と発達をしっかりと把握しているのは各学校の教職員です。そのため教育課程編成権や評価権は、すべて各学校に委ねられています。こうした各学校の評価権を侵害し、各学校の教育活動とは全く無縁の評定を押しつけ、各学校が責任を持ってつけた評定を無理矢理に変えさせる、法的根拠はどこにもありません。

 府教委は、合理的な理由があれば協議するとしていましたが、実際には変更を認める客観的な基準を定めておらず、協議の対象となったのはテストをまともに受けることができなかった場合だけで、ことごとくが門前払いにされています。テストに参加していなければ、各学校の評定が尊重されています。大教組は、府教委に対してチャレンジテストの廃止・撤回を求めるとともに、市町村教委には参加しないよう求めています。

3 中3チャレンジテストの中止・撤回を

 来年度の入試に向けて、6月には中3チャレンジテストが予定されています。中1・中2のチャレンジテストが生徒個々の内申書評定を決定する個人戦であるのに対して、中3では各学校の評定平均が決定される団体戦となります。6月のテストで、その後3月までの1年間の評定の範囲ワクが決定されます。さらに不当にもテスト教科以外の「4教科」までもがテスト結果により評定の範囲ワクが決定されます(資料2)。入試において内申書は大きな比重を占めます。教科の評定が「1」違うと、入試当日のテストの点数では10点の差(90点満点)がつきます〔標準のタイプⅢ〕。

 「この中学校の評定平均では希望の高校に入れない」、評定平均によって全中学校が格差づけされ、入試に「有利」・「不利」な中学校がつくられるなど、きわめて不公平な入試になります。

資料2
「中3チャレンジテスト」まったく不公平な入試に大変な序列化が

「有利」な中学校 (評定平均「3.7」の上位校)

―上限4.0で、10人に配分すると―

「5」 「5」 「5」 「4」 「4」 「4」 「4」 「4」 「3」 「2」

「不利」な中学校 (評定平均「2.2」の下位校)

―下限1.9で、10人に配分すると―

「4」 「3」 「2」 「2」 「2」「2」 「1」 「1」 「1」 「1」

4 中1からの内申書競争やめよ

 さらに重大なのは、来年度以降の入試から、1、2年の評定が内申書に加えられ、実質として中1から激しい高校受験競争が始まることです。

 内申書の脅しで子どもたちをテスト競争にかり立てる、入試の前倒しは断じて許されません。

 広島の中3生自殺問題では、内申書のあり方が問われましたが、今回の内申書改悪は「15の春」どころか「13の春」から子どもたちを追いつめるものであり、改悪の撤回を強く求めます。

「大阪教育」1872号3面 2016.4.10. 大阪教職員組合発行