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国語 増える漢字
-社会科と結びつけて楽しく学ぶ
大阪教育文化センター「学習指導要領問題」研究会
『おおさかの子どもと教育』90号 2018.2.所収
1 たちまち問題になる漢字の指導
①漢字の指導は、系統性を大事に、楽しく
新学習指導要領では、漢字の数が今でも多すぎる1006文字から、さらに増やされ、1026文字とされます。その増やされる漢字は、都道府県名の20字です。その20字をすべて4年生で教えることとなっています。
4年生でどう教えるかについては、後で述べたいと思いますが、その前に、漢字指導をどうすればよいかについて述べます。
学習指導要領の漢字は、系統性を無視した学年配当となっています。たとえば、「話」は2年生で教えるのに、「言」は2年生ですが、「舌」は5年生(新学習指導要領では何と6年生)で教えることになっています。
ですから教科書に出てくる一つひとつの漢字を個々バラバラに教えると、教師もしんどいし、子どもも大変です。漢字は系統性を大事に、そして楽しく学べるように工夫する必要があります。
多くの人がとりくんでおられることと思いますが、漢字を指導するときには、①読み(音読み、訓読み)②部首、③意味、④画数、⑤書き順、⑥熟語、⑦文章をつくる、という基本をふまえることが大切です。
たとえば、偏(へん)と旁(つくり)など部首が分かれば、部首によつて漢字を分類することができることを子どもたちが学ぶことによって、漢字に興味を持ち、その成り立ちも知りたがるようになり、楽しく学ぶことができるようになります。新出漢字で、「ごんべん」のつく漢字が出てきたときは、新出漢字だけを教えるのではなく、「ごんべん」のついた漢字集めをしてみることです。「話」「語」「記」「読」「詩」「誌」「説」「識」などを集めれば、「ごんべん」がつく漢字は、言葉に関係している漢字であることが分かります。そうして漢字に興味を持つことができたら、穴埋め熟語や漢字しりとりなどの漢字クイズなどにも楽しくとりくめるようになると思います。
さて、4年生ではどう指導すればよいでしょう。教科書がどうなるのか、現時点では分かりませんが、都道府県の漢字がバラバラに出てくる可能性もあります。
それを出てくるたびに一つひとつ教えたのでは、子どもたちも覚えにくいと思います。
この4月から、新学習指導要領にもとづく漢字配当表で教えることになっています。そして、4年生では社会科で都道府県の学習をするのですから、都道府県名の漢字は、社会科での都道府県の学習の中で、あるいは、社会科の学習と関連させて教えたらよいのではないでしょうか。
とはいっても、ただ都道府県名を覚えたり、それを漢字で書かせたりするだけでは、社会科の授業が無味乾燥になります。ですから、社会科での授業を楽しく豊かなものにしていく必要があります。
たとえば、スーパーで買い物をした時の包装紙を集めて、産地が全国に広がっていることを学び、その産地が日本地図を見ながら、どこにあるのかを学習し、そうした学習の中で都道府県名を知り、漢字で書けるように指導するなど、工夫してとりくめば、子どもたちも楽しく学べると思います。さまざまな工夫を学年や教科部会などで考えてみましょう。
2 文学を文学として、説明文を説明文としてきちんと教える
①学習指導要領が変わっても、国語科で教える中身は変わらない
学習指導要領が変わるたびに、国語科の取り扱いもおかしくされてきています。
例えば、現行学習指導要領では、「言語活動」が強調され、「報告」「記録」「説明」「依頼文」「案内状」など、およそ子どもの実際の生活とはかけ離れた内容を指導せよとされたり、「尋ねたり応答したり」「グループで話し合わせたり」ということが強調されて、ペアでの話し合いをすればそれでよいかのような指導が広くおこなわれています。さらには、「ディベート」などが押しつけられている場合もあります。
しかし、国語科で子どもたちが身につけるべき力は、大きく言って2つです。
1つは、認識の力を育てることであり、もう1つは、認識とともに、表現の力を育てることです。
国語科では、人間と人間をとりまく世界を言語によって認識することのできる力を育てること、つまり、認識の内容としては、人間とは何か、私たちの生きている世界とはどのようなものなのかを理解する力を育てることであり、どのようにすれば、ものごとの本質・真理・真実・価値・意味・法則に迫ることができるかという「分かるための方法」を身につけさせること、つまり認識の方法を育てることといえます。
そして、認識したこと、わかったことを言葉によって表現する力を育てることです。表現する力とは、話す力、書く力を育てることです。それは、単なるおしゃべりではなく、筋道だてて話す力であり、ただ文字を書き連ねるのではなく、筋道立てて書く力であると考えます。
②文学では
文学で言えば、すぐれた文学作品を読み味わうことをとおして、より豊かな人間観や世界観を育てることです。
そのためには、教材を選ぶときには、芸術性、思想性、教育性という3つの観点を満足させる作品を選ぶ必要があるし、それが豊かな文学的形象として描かれている作品を選ぶ必要があります。当然、教科書に掲載されている教材だからといって、すべてがよい教材であるとは限らず、取り扱いには軽重をつけ、時には「投げ込み」教材で教えることも必要になってきます。
また、認識の方法でいえば、たとえば、「対比」という認識の方法を使って、ものごとの本質を理解することができます。
2年生の「スイミー」では、赤い魚の中に、真っ黒な魚であるスイミが描かれていますが、そのことによって、他の魚とは違った特別な存在であることが表現されています。そのことは、「ぼくが目になろう」という場面で、スイミーが集団の中のリーダーという位置づけがされていることから明らかになります。
このように、「対比」や「類比」などの認識の方法を使って、作品が描いている世界を読み味わうことが大切であり、そのことは学習指導要領がどう変わっても、私たちが文学教育で追求していく内容であることに変わりはありません。
ですから、新学習指導要領のもとでも、これまでのすぐれた実践から学び、また、これまでとりくんできた文学教育実践に自信を持って、教育活動をすすめることが大切であると考えます。
③説明文では
先の文学教育で述べたことは、説明文でも同様です。
子どもたちが説明文で身につける力は、「説得の論法」と「筆者の表現の工夫」を学び、それをとおして、認識する力と表現する力を身につけることです。
よい説明文は読解不要です。読めばわかるように書かれている作品がよい説明文です。説明文指導の中心点は、なぜこの説明文は分かりやすいのか、ということを、筆者の論理展開と表現の工夫に着目して子どもが学ぶことにあります。
そうした学びができるために、教材を選択する場合には、説明されている内容に学ぶ値打ちがあるか、観点に一貫性があるか、誰でもが納得できる組み立てと筋道で説明されているかという角度から選択することが重要です。
たとえば3年生の「ありの行列」という説明文がありますが、この作品は、序論、本論、結論がはっきりした説明文です。そして、本論では、筆者は、アメリカのウィルソンという学者を登場させ、彼のおこなった実験、観察、研究について述べます。ウィルソンのおこなった実験、観察の文末表現は現在形、過去形を適切に使用して述べられています。結論部分では、「このように」という書き出しによって、これまで述べられてきた実験、観察、仮説、研究、その結果分かったことを総括し、文末は「わけです」という言葉で締めくくって、序論である第1段落の問題提起に対する答えであることが示されています。大変すぐれた教材と言えるでしょう。
しかし、説明文においても、教科書に掲載されている作品がすべてよい作品であるとは限りません。説明文教材においても教材の扱いには軽重をつける必要があります。
また、指導に当たっては、いくつかの大事なポイントを押さえる必要があります。
第1は、題名です。たとえば、「花を食べる」「たんぼぼのちえ」「たねのたび」「ビーバーの大工事」など、説明文の題名には、必ず工夫があります。
第2は、段落です。文学では場面が大事ですが、説明文では、段落分けが大切です。必ず段落番号を書いて指導することが求められます。
第3は、各段落の構成です。そのためには、各段落が、いくつの文章でできているかを見ることが大事です。段落ごとに文番号を書いて指導します。
第4は、接続語です。接続語は、論理展開の命と言ってもいいほど大切なものです。
「だから」、「それで」、「そこで」、「よって」などの順接は、前の事柄が、原因・理由となり、その当然の結果が後にくることを示します。逆に「しかし」、「ところが」、「でも」、「けれど」などの逆説は、前の事柄と対立するような事柄が後にくることを示します。ですから、どのような接続語が使われているかを見ることで、話しの筋道がわかるので、子どもたちに着目させることが大切です。
こうした、これまでの実践をとおして蓄積されてきた指導内容に確信を持って、説明文の指導をすすめましょう。
3具体的にはとうするか
新学習指導要領にもとついてどのような教科書がつくられるのか、現時点ではわかりませんが、教科書がどうなったとしても必要ないくつかのとりくみについて述べます。
第1は、当然のことですが、しっかり教材研究をすることです。そうすることによって、教材の扱いに軽重をつけたり、教材を組み替えたり、時には「投げ込み教材」で教えたりすることが可能になります。
その教材研究は、もちろん一人から始めるのですが、可能な限り集団でおこなうことが大切です。その集団は、学校で学年会や教科部会という場合もあれば、学校外では教文センターの研究会やサークルなどを活用したりする場合もあります。そうすることで、より教材研究が深まり、確信が持てるようになります。
教材の組み換えなどのとりくみは、学級だけでもおこなえます。その際、なぜ教材を変更するのか、あるいは教科書にない教材を扱うのかについて、父母・保護者に根拠をもって説明することが大切です。父母・保護者の合意さえ得ることができれば、実践の幅は大きく広がります。
また、学年でそうした話し合いができれば、なおいいと思います。その際も、学年の父母・保護者に説明して合意をつくることが求められます。
さらに、学校全体で教職員の合意をつくることができれば、学校独自の教育課程をつくりあげることができます。
こうしたとりくみが、教育課程の民主的編成であり、その気になれば、どの学級、学年、学校でもとりくむことができると思います。
これを積み上げることによって、1年生から6年生まで系統的な指導をおこなうことができ、新学習指導要領の害悪をかなり取り除くことができると考えます。