新学習指導要領 批判分析 家庭科

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大阪教職員組合 「教育課程・教科書」検討委員会

家庭科

<小学校>

1.新学習指導要領の特徴と問題点

 新学習指導要領の大きな特徴として次の3点があげられる。

 まずは「第1 目標」において、新学習指導要領で初めて示された「資質・能力」に準拠し、家庭科では、「生活をよりよくしようと工夫する資質・能力」と規定されていることである。そしてその3つの柱に沿った具体的目標が示されている。このように、理解する力や表現する力を、身につけるべき「資質・能力」として示すことは、押しつけにつながり危険である。

 二つめは、「第2 内容」がA~Cに共通して、「課題を持って、○○を考え、工夫する活動を通して、次の事項を身につけることができるよう指導する。」と示されている。そして、「~できること」から「~理解し、適切に使用できること」に変更しており、体験してこそわかるといった子どもの視点からの目標になっていないことは大きな問題である。また、「思考力・判断力・表現力等」が全てで新設され、「課題を解決する力を養う」など、学習方法まで細かく規定していることは、子どもたちの自発的な学びを阻害するものである。「内容の取扱い」では、(3) 実践的・体験的な活動を充実すること。(4) 技能の習得状況や個に応じた指導の充実に努めること。が新設され、一層の配慮や充実が求められるようになっている。

 三つめは、「第3 指導計画の作成と内容の取り扱い」が高度な内容になっている。「協力、健康・快適・安全、持続可能な社会の構築等」の見方・考え方の視点を持って、計画するだけでなく、「B衣食住の生活」の学習と関連させた活動や「異なる世代との交流」、他教科と関連させた活動、衣食住生活全てで生活文化の取り扱いの充実が求められることも大きな変更点である。

2.私たちがめざす「家庭科教育」

 「知識」や「技能」を身につけることは今までも大切にしてきたことであり、生活を主体的に送る上でも大切である。

 しかし、「思考力・判断力・表現力等」を全てに言及していることは、一方的に考えや正解を押し付けてしまうことにつながりかねない。基礎基本は大切にし、自らが考え、行動していける生活の営みを身につけさせることが重要である。また、「~できること」から「~理解し、適切にできること」と変更になっているが、子どもたちが自立してできるようになるまでには、相当の時間がかかる。このことからも、子どもの生活実態からはじまる実践を進めることが重要である。

 「第3 指導計画の作成と内容の取り扱い」では「特別支援教育」の充実や「食物アレルギー」への配慮、ICTの活用の充実が求められると言及されているが、今までも子どもの発達や状況に合わせ進めてきたことである。一層の充実を求められているが、そのためには、教育条件や環境を整えることが重要である。

<中学校>

1.新学習指導要領の特徴と問題点

 特徴と問題点として、次の2点があげられる。

 まず、現行学習指導要領では「『基礎的・基本的な知識及び技術の習得を通して』生活についての理解を深め」、とされているが、新学習指導要領では、その前に「生活の営みに係る見方・考え方を働かせ」という文言が新たに挿入されている。また小学校と同様に、新たに3つの項目を立てて、育成すべき資質・能力を具体的に示されていることは大きな問題である。

 二つ目は、内容項目の大きな変更はないが、A家族・家庭生活が重視されている。「3 内容の取扱い」の記述でそれが如実に表れている。(2)のアでは取扱い方を詳しく記述し、エでは「高齢者の身体の特徴について触れること」が新設されている。また「介護体験」にまで言及し、「介護は家庭や地域で」、という自己責任論を強く押し出している。他にも、日本の伝統文化を大切にすることを否定はしないが、「日本の伝統文化」を重んじ、継承していくことに各所で言及していることは「愛国心」教育の押しつけにつながり、連携先に新たに「企業」が加わっていることは、財界が求める「人材」育成につながる危険性があり、大きな問題である。

 最後に、住生活では「安全な住まい方」が追加されているが、住空間を整えることだけで、「自然災害」から私たちの命や財産が守られることはなく、内容に疑問が残るところが散見されるところも問題である。

2.私たちがめざす「家庭科教育」

 「家族・家庭の基本的な機能」が重視されている中、私たちは「多様な家族がある」という視点を持ち実践を行うことが大切である。また、内容を逆活用できる部分もある。例えば、「内容の取扱い」にある「生活の科学的な理解を深めるための実践的・体験的な活動を充実すること」を活用し、「科学的な」ものの見方や態度を育てていくことや、「協力・協働、健康・快適・安全、生活文化の継承、持続可能な社会の構築等を視点として考え」ての部分から、様々な問題を解決していく力を子どもたちに身につけさせるようにする視点として活用できる。また、これまでも実習などでおこなってきたが、食生活で「だし」が取り上げられたことは大きい。それをさらに発展させ、日本の農業、漁業、林業といった第1次産業を大切にした実践が展開できる展望がある。

 しかし、「高齢者」問題、「介護」問題、自然災害と住居の安全性の単元が「自己責任論」に陥らないような取り上げ方が大切であり、小学校と同様に「特別支援教育」の充実、「情報通信ネットワーク」の活用、「技能の習得状況に応じた少人数指導」をおこなうには、条件を整えることが重要である。

 実践で大切にしたいことは、生徒や家庭、地域の実態をしっかりつかみ、教師自身が「科学的な」ものの見方を持ち、しっかりとした「主権者」を育てる視点をもつことである。