新学習指導要領 批判分析 技術・職業

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大阪教職員組合 「教育課程・教科書」検討委員会

技術・職業

子どもの自主性、やる気を奪う新学習指導要領
“技術”はもともと深い学びの授業です

1.新学習指導要領の特徴と、問題点 中学教師は過労死ラインの人が半数いるといわれている。教科指導以外に学級指導、生活指導、クラブ活動指導、事務作業で教材研究ができる時間が減ってきている。そのような中、新学習指導要領の問題点は、次のものである。

 時間数をそのままで内容を増やす今回の改訂では、「深い学び」はできない。
 資質・能力を育成するために、実践的・体験的な活動の減少で深まりのある学習ができなくなる。

 情報分野の内容が増加するが、ある専門家は「情報」の授業で5分の2時間を使うと他の内容とのバランスが崩れると指摘している。

<学習指導要領の変化>

(現行指導要領の目標)
○進んで生活を工夫し創造する能力と実践的な態度を育てる
*削除(自主性を奪う)
(新学習指導要領の目標)
 生活を工夫し創造する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
*追加(初めから評価の基準達成が意識され、そのための学習指導になる可能性(危険性)が強まる恐れがある)
*追加(目標の具体化) (2) 生活や社会の中から問題を見いだして課題を設定し、解決策を構想し、実践を評価・改善し、表現するなど、問題を解決する力を養う。
*決められた学び方で設定された問題の解決策、実践につながる

 

(変更点)

(1) ABCD全てに「生活や社会を支える技術」を設定
(2) D「情報の技術」の内容(時間)を増加
(3) 目標に準拠した評価「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点になる
(4)生物育成内容の取扱いで(調べる活動などを通して)作物の栽培、動物の飼育及び水産生物の栽培のいずれも扱うこと。になる。

2.私たちが目指す「技術科教育」

 子どもと作ってきた技術の授業は、深い学びの実践が多数ある。次に3つの事例を紹介して討論の資料とする。

① 技術の負の部分にも触れるべき

 今回2、内容A、B、C、D全ての「生活や社会を支える技術」において、技術の負の部分があることにも触れるべきである。たしかに、技術の使い方で生活が便利になった。例えば電気で生活が快適、便利になったことがあげられる。

 しかし、震災が原因で福島県の原子力発電所が爆発して人々の生活や社会を支えるどころか壊してしまった。放射能汚染で住めなくなった人がいる。全国の原子力発電所では放射能廃棄物が増えている。

 これを解決する技術はない。

 子どもには手回し発電機の製作などでも「原子力に頼らない自然エネルギー」を利用して電気を作る技術もあることを学んで欲しい。

② 技術は深い学びに発展する。

 技術科は深い学びに発展する教科である。栽培の授業などを通じて子どもたちは育てる喜びを感じたり、感動をおぼえたりする。その理由は次の実践から生まれた。

○学校には農園が無いので袋栽培でトウモロコシを栽培した。教育委員会の方にグランドに入れる土を運んでもらい、堆肥を混ぜる。そして、その土を玄米の保管用の通気性のよい袋に入れる。

 トウモロコシの種をうめて、毎日水やりをする。

<収穫した時の感想>

・僕は正直なところ、あんな袋に土を入れて、トウモロコシが育つのかと疑問に思っていました。

・母が大のトウモロコシ好きなので、母と半分に分けて食べた。自分で育てたものを食べてみて、こんなに美味しいものだとは思わなかった。

・育てているうちに、自然の力はすごいと思った。毎日必ず何かの変化があるからです。土から芽が出て、花が咲いて実ができる。自然は私たちにとって改めて大切なものだと思いました。

<この実践からの子どものたちの学び>

・体験することで学ぶ喜びをもつ。

・自然の力の素晴らしさを知る。

・他人と共有する事で人の温かみに気づく。

③資質・能力はひきだすもの

 今回の改定の最終具的は、国が定めた「資質・能力」の育成になっている。これでは、子どもの感動や喜び、やる気を引き出す実践でなく、子どもの資質・能力を評価する事を優先する授業内容になる。これは技術の教科としての存在感をなくす事につながる。

 学習指導要領では、子どもの「資質・能力」を育成するとあるが、子どもは基本的に資質・能力を持っている。それを引き出して子どもに気付かせるのが教育である。日頃、子どもたちには「技術の発達が人類の発展を支えてきた」と授業で伝えている。

 技術は石から石器を作ることから始まった。石器を作るときは完成品を想像して、どの場所を叩いたらよいか決める。人類は創意工夫をおこなう中で自分の持っている資質・能力を伸ばし、引き出してきた歴史がある。また、経験で得た技術を仲間に伝えるには、身振り手振りや、簡単なコトバを使い、地面に図も書いて相手に伝えることで技術は発展してきた。そして図を何回もかくことで「脳が鍛えられ、想像力が高まる」このように技術が発展する中で、人類は発展してきた歴史がある。

<製図の授業での工夫>

 簡単な正方形を書く事から始めると、難しい図も理解出来るようになり、物事を多面的に見て考える力が付く。ここからも子どもたちは基本的に資質・能力を持っており、それを引き出すのが授業である。製図は想像力を高めるのに有効なものであり大切な時間である。しかし、製図を学ぶ時間が少なく、改定のたびに製図の内容が変わることは大きな問題である。

3.まとめ

 技術科がかかえる問題点を最後に記しまとめにしたい。

① 技術・家庭科の週当りの授業数を増やす。中学3年生のように週1時間では教科として成り立たない。

② 一人の先生で1、2、3学年の技術・家庭の全てを教えるのは無理がある。

③ 深い学びの学習ができるように、少人数での授業編成を行い、専任教師を増やすことが急務である。

④ 生物育成に必要な施設、設備の充実を。