新学習指導要領 批判分析 理科

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大阪教職員組合 「教育課程・教科書」検討委員会

理科

<小学校>

1.新学習指導要領の特徴と問題点

<目標・内容をこまかく規定>

 今回の改訂により、全学年で、目標、内容が詳細な記述になっている。その背景にあるものは、新たに示された「資質・能力」である。これが示す3つの柱にそって、①観察、実験に関する基本的な技能、②課題を追求すること、③課題を追求し、主体的に問題解決しようとする態度、をどの学年のどの単元でも身に付けるようになっている。このように、国が「資質・能力」を示し、育成すべき力を限定していることは注意が必要であり、授業の画一化につながるおそれもある。

<表現方法の高度化>

 「思考力・判断力・表現力」にかかわり、表現するまでのプロセスが具体的に示されているのも、特徴的である。
課題を追求することを前提に、3年生では、「主な差異点や共通点を基に問題を見出し」、4年生では、「既習の内容や生活体験を基に…根拠ある予想や仮説を発想し」、5年生では、「関係する条件についての予想や仮説を基に、解決の方法を発想し」、6年生では、「より妥当な考えをつくりだし」表現することになっている。一定、段階をおった指導に見えるが、求められていることが高度であり、すべての子どもがこのように表現することは難しいうえに、表現方法を規定したことは大きな問題といえる。

<プログラミング教育の新設と、自然災害を全学年で取扱う>

 今回の改訂で小学校では、「プログラミング教育」が必修化される。中学校では技術科の内容に該当するが、小学校では、総合的な学習、算数、理科、音楽の時間を利用し、おこなうようになっている。

 理科においては、第3指導計画の作成と内容の取扱いで、「観察、実験などの指導にあたって…プログラミングを体験しながら論理的思考力を身につける」としている。そして、6年生の電気の性質や働きの単元が例示されている。

 「プログラミング教育」は、急に出てきたものであり、教育現場からの要望によってできたものではない。また、理科との関わりも明確にされておらず、なぜ理科で「プログラミング教育」をおこなわなければならないかも、明らかでない。

 そして、教育環境の整備なしでは、この「プログラミング」はうまくいくはずがない。

2.小学校理科で大切にしたいこと

 今回の改訂では、「科学的な見方や考え方を養う」という文言が消えた。

 本来理科は、実験や観察などを通して直接自然に働きかけ、科学的な見方を身につけていく教科である。そして科学とは何かを学ぶところに面白さがある。突然現れた「プログラミング教育」などに惑わされず、子どもたちが科学を学ぶことの楽しさや大切さを実感できる授業を展開することが、今こそ求められる。

<中学校>

1.新学習指導要領の特徴

<目標の変化>

 中学校理科の目標は、「自然の事物・現象に関わり、理科の見方・考え方を働かせ、見通しをもって観察、実験をおこなうなどを通して、自然の事物・現象を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成する」とし、新たなに規定された「資質・能力」にもとづき設定され、そこでは、「科学的に探究する態度」までも明確に位置づけられている。

 現行の指導要領では、「科学的な見方や考え方を養う」ことが大きな目標となっていた。しかし、探究する態度が記されたことや、「科学的」な見方や考え方を、「『理科』の見方・考え方を働かせ」と変わったことは、大きな問題である。

<理解すること・探究することの強調>

 目標から内容に関して、「科学的に探究する」ことが強調され、その視点からの「技能」や「態度」を身につけることが重視されていることは注視する必要がある。また、現行の指導要領では、観察や実験から、性質などを「見いだす」ことや、「とらえる」となっていたところが、「見いだし理解すること」「関連付けて理解すること」と、1分野、2分野ともに、「事象を理解すること」が強調されている。たしかに理解することは重要であるが、ここまで「理解すること」が強調されていることは、合わせて注視することが重要である。

2.大切にしたいこと~私たちの実践のポイント~

 理科の授業を通じて子どもたちに学ばせたいことは、国や財界が求める人材育成に必要な「理科の見方・考え方」ではなく、自然の事物・現象について理解を深め、「科学的な見方・考え方」を身につけることである。しかし、新学習指導要領は、「科学的に探究すること」が重視され、態度まで規定するところに問題がある。

 そのような中、現代日本の抱える課題等にかかわる内容が補填されている面もあり、その部分は最大限に活用し、授業を展開していくことが重要である。

 例として第1分野では、プラスチックの取り扱いの変化がある。現行指導要領では、有機物と無機物、金属と非金属の違いの中で唐突に扱われてきたが、新学習指導要領では、天然の物質や人工的につくられた物質の中で取り扱われるようになったことは、意義のあることである。

 第2分野では、「内容の取扱い」において、「地球内部の働き」の中で、「津波発生の仕組みについても触れること」が追加された。これは東日本大震災など、現代がかかえる問題に即した内容であり、とりあげられたことは大きい。現行の指導要領から追加された、放射線の内容と合わせて、原発事故の問題等を深く学ぶチャンスが広がっている。

 このような部分をうまく活用し、科学的見地にもとづいた授業を展開することが求められる。