元校長・教頭先生らがアピール「チャレンジテストの中止・再検討を」

子どもたちの豊かな成長と学校教育を歪めるチャレンジテストの中止・再検討を求めます

― 元管理職者のアピール ―

 府民のみなさん、大阪府教育委員会が今年度の公立高校入試に導入する新制度は、今後の大阪の子どもばかりか学校のありかたや地域社会をもこわしかねない重大な問題を持つものとして、警鐘を鳴らさずにはおれません。 

 新制度は、①府内公立中学校の全学年に統一テスト(チャレンジテスト)を実施する。②1・2年学年評定はチャレンジテストを基準にする。③3年ではチャレンジテストの平均点で中学校ごとの評定基準を決める。④調査書(内申書)の評定は、全学年の評定をもとに決める、といった内容です。

 この制度の何が問題なのでしょうか。

1.中1の成績から内申に入るため、中学校に入った段階から受験競争が始まる。

2.府内統一テストのため、授業内容も授業の進度も縛られる。

3.中3は中学校ごとの平均点で競わされる。平均点を上げるために、テスト対策勉強が強いられる。点数の取れない生徒に友達から「休め」と言われたり自分から「休む」と言い出す生徒が出てきている。府公立中学校校長会も「調査書(内申書)に記載する評定については各中学校にゆだねられたい」との要望書を出している。

4.チャレンジテストの平均点の高い中学校では高い内申点の生徒が多くなる。中学校がランクづけられるため、転校したり、校区をなくして進学する中学校を選べるようにせよということになりかねない。学校が地域の文化の中心でなくなり、子どもを地域で育てるということもなくなる。

5.チャレンジテストは「成績評価のためにされるのではなく、行政調査に限り合法」(1976年、旭川学テ最高裁判決)の判断に照らせば違法性が強い。
ところが大阪市内では、すでに公立中学校のパンフに「進路先高校名」を公表したり、大阪市教委は小3~6年生にも、独自の「学力テスト」を実施することを決めています。

 府民のみなさん、子どもたちに過度の競争を強いることは、いじめや不登校、校内暴力の増大などの要因ともなり、国連子ども権利委員会からも、三度にわたって「抜本的な見直し」が勧告されています。このチャレンジテストは、不公平な受験制度と過度の競争教育をさらに加速させ、新たな困難と問題を広げるに違いありません。

 今の大阪は経済不振が長引く中で、生活困窮者が多く、子どもの貧困率も全国で2番目の高さです。家庭環境に恵まれず、学習習慣も身につかない子どもたちも少なくありません。不登校の児童や生徒の割合も全国水準より高く、校内暴力も突出しているのが現状です。こうした実情を無視してテストでさらに追い立てるなら、子どもたちの状況は一層深刻になることは目に見えています。教育行政が今すべきことは、どの子にとっても、楽しく、互いに支えあい、励ましあって学びあえる学校であるように手を尽くすことではないでしょうか。

 大阪の子どもたちと教育と地域を守るため、「チャレンジテスト」結果を高校入試の内申書に組み込む制度の実施を断念するよう強く求めようではありませんか。同時に、今の「競争一辺倒」の受験制度の改善に向け、保護者、学校現場の教職員、教育研究者などの意見をもとに、豊かな学力と人間性を育む中等教育にふさわしい、高校入試制度の検討を進めていくことを呼びかけるものです。

2017年1月31日

(呼びかけ人―元管理職経験の大阪退職教職員の会(大退教)会員有志)
(あいうえお順)

 鵜沼 勝男 元箕面市立西南小学校教頭    
 岡林 秀幸 元枚方市立枚方中学校校長    
 小畑 哲雄 元淀川女子高等学校教頭     
 神原 敬夫 元大阪府立長尾高等学校校長   
 栄  繁泰 元枚方市立楠葉南小学校校長   
 佐藤 順一 元大阪公立学校管理職員協議会会長
 曽和 照之 元高槻市立南大冠小学校校長   
 谷川 隆男 元和泉市立鶴山台北小学校校長  
 近葉 善忠 元岸和田市立修斉小学校校長   
 中本  努 元岸和田市立土生中学校教頭   
 中本 幸美 元大阪市立出来島小学校校長   
 永吉 茂夫 元大阪市立南津守小学校校長   
 西田 勝宏  元東大阪市立玉美小学校校長  
 西林 幸三郎 元大阪府小学校校長会会長   
 紅谷 章子 元大阪夕陽丘学園高等学校校長  
 山畑 富男 元大阪市立梅香小学校校長    

 1月31日現在、府下の元管理職経験者61名から賛同がよせられています。

        事務局 大阪退職教職員の会(会長 林 正敏)