教育への政治介入を許さず、子ども、父母・住民、教職員の願いが届く教育委員会へ

教育への政治介入を許さず、子ども、父母・住民、教職員の願いが届く教育委員会へ

2014年6月22日

大阪教育文化センター2014年度運営委員会総会

 安倍内閣は6月13日、教育委員会制度改悪のための地教行法改悪案を強行可決しました。私たちは、この教育委員会制度改悪に厳しく抗議するものです。

 この教育委員会制度改悪は、以下の重大な問題点を持っています。

 第1に、首長が「当該地方公共団体の教育、学術及び文化の振興に関する総合的な施策の大綱を定めるものとする」として、教育の方針を一般行政の長である首長が決定することによって、政治が教育に介入するしくみをつくるという大問題です。

 第2に、しかもその教育についての「大綱」は、「教育基本法第17条第1項に規定する基本的な方針を参酌して」定めるとされており、地方の教育方針を改悪教育基本法でしばり、改悪教育基本法の具体化をすすめるものとなっています。

 第3に、新たに首長が招集する「総合教育会議」を置き、ここで教育にかかわる事項を決めるとされており、結局首長の思うままの教育施策がすすめられることになります。

 第4に、これまで教育委員会の代表者であった教育委員長を廃止し、事務方の責任者である教育長が教育委員会を代表するとともに大きな権限を持つことになり、教育委員会は限りなく諮問機関に近づくことになります。

 結局、この教育委員会制度改悪のねらいは、教育委員会を国の方針と首長の方針の両面でしばり、教育を変質させようとするところにあるといえます。それは、政治が教育をコントロールしてはならないという戦後教育の出発にあたっての大原則を根本から崩すものといわなければなりません。

 これに対し、教職員はもとより、多くの教育学研究者、教育行政関係者、父母・住民から反対、あるいは慎重審議を求める声など、多くの危惧が寄せられていました。こうした声を無視して強行したことは、きわめて重大であり、許しがたい行為といわなければなりません。

 教育委員会制度改悪は、「愛国心教育」や過度な競争教育を子どもたちに押しつける仕組みづくりとして、この間すすめられてきている教科書検定基準の改悪や、ねらわれている道徳の「教科化」という流れと一体のものであり、安倍「教育再生」の一環です。

 安倍「教育再生」の背景には、解釈改憲によって集団的自衛権の行使を可能とし、日本をアメリカといっしょになって海外で「戦争する国」へと、この国の形を変えてしまおうとする危険な動きがあります。まさに、「『戦争する国』の人づくり」をねらうものと言わなければなりません。

 大阪教育文化センターは、この教育委員会制度改悪を重視し、これを許してはならないという立場から、第24回共同研究集会で「子ども、父母、教職員の願いが届く教育委員会へ」をテーマに、講演とシンポジウムをおこない、「教育における民意とは何か」をキーワードに、研究者、元大阪市教育委員長、元大阪府小学校長会会長、元大阪府立高校PTA協議会会長、全日本教職員組合前中央執行委員長によって、立場の違いを超えてこの問題を議論するなど、とりくみを強めてきました。 また、その準備過程で「教育委員会制度研究会」を新たにたちあげ、研究者、教職員、父母が率直な意見交換をしながら、研究をすすめてきています。さらに、機関誌「おおさかの子どもと教育」76号で、「安倍『教育再生』を大阪から撃つ-対抗軸はここに」をテーマに、教育委員会制度改悪はもとより、教科書をめぐる問題、道徳の「教科化」をめぐる問題を特集し、その問題点を明らかにするとともに、現場からのとりくみを汲み上げ、教職員をはじめ、多くの父母・府民のみなさんに広く知らせるとりくみをすすめてきました。

 大阪教育文化センターは、引き続き力を入れて、そうしたとりくみをすすめるものです。

 教育委員会の果たすべき本来の役割は、子どもの成長・発達を目的としておこなわれている教育活動を尊重し、教育の自由と自主性を守り、教育条件を整備するという役割です。

 教育委員会制度は改悪されましたが、この本来の役割まで消し去ることはできません。

 教育への政治の介入をゆるさないためにも、教育委員会にその本来の役割を果たさせることが重要です。そのために、子どもや父母・住民、教職員の願いを教育委員会に届け、教育行政に反映させていくとりくみを、従来にも増して強めることが求められます。それは、父母・住民が教育の主権者として力を発揮するとりくみといえます。その支えとなるのは、憲法と教育の条理です。

 大阪教育文化センターは、憲法と教育の条理の力に確信し、地域・草の根からそうしたとりくみが前進するよう、教育文化センター活動をとおして、さらに力を尽くすものです。