新学習指導要領 批判分析 生活科・総合

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大阪教職員組合 「教育課程・教科書」検討委員会

生活科・総合

1.新指導要領の特徴と変更点

 今回の改定では、どの教科においても、「道徳教育の目標に基づき、道徳科などとの関連を考慮しながら、教科道徳の示す内容について、教科の特質に応じて適切な指導をすること」と書かれている。

 もともと道徳性の強かった「生活科」であるが、さらに、文章の後半が道徳的な内容が盛り込まれている。

 まず、目標は他教科と同様に、育成すべき「資質・能力」に合わせ、「具ハ体的な活動や体験を通して、身近な生活に関わる見方・考え方を生かし、自立し生活を豊かにしていくための資質・能力の育成を目指す」と示し、その柱にそって構成されていることは大きな問題である。

 そして目標の記述が、「~に関わることを通して、……ことができる(思考・判断・表現)」「……気付き(知識・技能)」「……するようにする(学びに力・人間性等)の形式で記述になっているところに特徴がある。

 内容に関して、追加された文言の多くが、「~のことが分かり」となっていることや、自然の様子が追加され、それらに対し、「関心をもって働きかける」となっていることは注意が必要である。

 指導計画の作成と内容の取扱いでは、前半部分に、カリキュラムマネージメント、「アクティブ・ラーニング」の視点・見方・考え方などが追加されたことや、児童の発達の段階や特性を踏まえ、2学年間を見通して学習内容を設定することが強調されている。

 また、「他教科等」との関連、「低学年における教育全体」の充実「中学年以降の教育」への円滑な接続が謳われていることに加え、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」と関連していることは大きな問題である。「他教科などにおける学習に円滑に移行」「自己を発揮」「自覚的な学び」に向かう。生活科を中心とした「合科的・関連的な指導」や「弾力的な時間割」の設定されていることも注視することが必要である。

 他にも、気付いたことを基に考える学習例として、見付ける、比べる、たとえるに、「試す」「見通す」「工夫する」を追加したり、低学年段階からコンピューターなどの情報機器を適切に活用したりすることが記述されている。

2.問題点

 このような特徴から次のような問題点がある。

 一つ目は、後半の道徳的な文章により、全体を徳目的な内容に変容させることになることである。例えば、「身近な人々、社会及び自然とのかかわりを深めることを通して」「自分を見つめることを通して」「自分のよさや可能性に気付き、意欲と自信を持って生活するようにする」と、身近な人々の支えを強調し、お世話になった人への感謝を強要し、さらには自らの生活の姿勢まで指示する内容となっている。心の押し付けが明確である。そして、伝え合いの学習の「相手のことを想像して・・など」細かく態度や心がけを明記していることは、態度主義につながり大きな問題である。

 二つ目は、子どもたちの発達段階や背景を無視している点である。「家庭での生活は互いに支え合っていることが分かり」と、いろいろな家庭があり、大切ではあるが配慮のいるこの学習に相応しくないことや、自らの成長をメタ認知的な視点で無理やり見させようとしているが、低学年の発達段階に即していないのではないかと考える。

 最後に、コンピューターなどの情報機器の使用で、その特質を踏まえ、児童の発達の段階や特質及び生活科の特質などに応じて適切に活用するようにするとしているが、低学年の初期段階から、活用できるまでのコンピューターの指導に、生活科の時間が充当されることが考えられる。

3.生活科で大切にしたいこと

 生活科は「自然・社会・人」を認識する土台つくりの教科として位置付けることが大切であり、①ものを見る目を育てること、②人との関わりから学ぶこと、③環境保全の観点を持つこと、が重要である。

 生活科では、子どもたちの身近な自然や社会を、具体的な活動や体験を中心に学習する。子どもたちが生活する地域や生活に根ざし、五感を働かせて事物・事実をリアルにとらえ、調べていく。興味や関心は、学習意欲を高め、共同の学習による交流・認識の広がりを大切にする。

 自然の仕組みや不思議を実感し、社会のいろいろなモノやコト・人に出会い、物の見方を育て、知識を豊かにし、自然認識・社会認識の土台つくりとなっていくのである。事実を通して、子どもたちは言葉を獲得し、論理をみがくことができる。本質に迫った学びの中でこそ、感性が豊豆かになっていき、感動する心が生れていくのである。「これまでの生活や生活をさせてくれた人々に感謝の気持ちをもつ」「生き物への親しいを持ち、大切にすることができる」ことは、道徳的押し付けを目標や内容にあげなくても、本物の学びの中で子どもたちが自ら獲得していくものである。子ども自身が感動し、心が震える体験を深く刻み込むことが大切である。みんなで学び合い、響き合いのある学習集団、認め合い、励まし合える学習集団作りは生活科を通しても追求したい。保護者や地域の方の協力も大いに得て、学校、地域ぐるみの学びを創っていくことが大切である。

 今、多くの問いが生まれ、探求し続ける生活科の学びを「指導要領」を逆手にとって、子どもと共に創造し、大胆に展開していくことが重要である。

 えっ?総合の時間を英語に?

  小学校英語は、移行措置期間から行うことになります。

 小学3、4年生は、「聞くこと」「話すこと」の内容が入り、年間15時間の授業がはじまり、小学5、6年生では、①発音、②アルファベット、③代名詞や過去形の文法指導、④「読むこと」「書くこと」を指導することになっています。

 そして文科省は、年間最大15時間までは、「総合」の時間を充てることを特例として認めるとしており、これも大きな問題です。