「学校でソラダス」をとりくんで
大阪教育文化センター環境教育研究会
【1】 取り組みに86校が参加
5月19日に二酸化窒素府下一斉測定運動「ソラダス2016」が実施されました。
30年近く実施さてきたこの運動は、大阪の大気汚染の実態を地域ごとに詳しく調査し、地域住民の健康実態との関係を明らかにするという成果を上げてきました。
今年度の調査では同時にいくつか行われる自主測定運動の一つとして、府下の学校での大気汚染実態を明らかにする目的で「学校でソラダス」を呼びかけました。
「大阪教育のつどい」や「大阪科教協教育研究集会」などで参加をよびかけ、3月には出発集会として「大気汚染の現状を子どもの健康を考える」学習会を行いました。この結果、86校が参加して自主測定運動が行われました。内訳は大学1、高校26、中学校22、小学校34、支援学校1、個人団体2、です。
測定の結果は能勢や泉南の山沿いの学校では10ppb以下のところもありますが、平野部では周辺でも10~15ppb、堺や東大阪や豊中などの大阪市周辺のでは15~25ppb、大阪市内や渋滞の発生する幹線道路沿いでは30ppbを超えるところもありました。大きな値になったのは豊中市内の中央環状線沿いの50ppbや東大阪のこれも中央環状線の交差点の54ppbでした。測定の結果の詳細は教育文化センターのHPに測定データと地図を公開しています。
【2】大阪の学校の環境はどうか
現行の環境基準は「一日平均値が40~60ppb内またはそれ以下であること」となっています。今回の測定ではこの値を超えるところはありませんでした。
しかし二酸化窒素による健康被害が出ないということでもうけられていた旧環境基準20ppb以下を達成したところは全体の半分以下です。学校近くの道路で測定したデータもありますが、子どもたちが日常的に生活する学校の環境としてはかなり問題の多い結果です。
特に大阪市内や幹線道路沿いの学校ではかなり高い値がでています。呼びかけのチラシの中でも指摘しましたが文科省の学校保健調査では小中高それぞれでぜん息の罹患率は40年前の2倍から4倍という高い状況が続いています。ソラダスの調査で二酸化窒素濃度(日平均値)で2倍近い差がある大阪市内と周辺地域ではぜん息の罹患率が2倍になっていることはよく知られています。また昨年環境省は調査報告で、二酸化窒素の濃度と子どものぜん息の発症との強い相関関係があることを認めました。学校での測定運動はこういった子どもたちの健康についての認識を広げることに大きな意味があります。
【3】生徒と一緒に環境問題を語ろう
今回の測定では20校近い学校で教員だけではなく科学部や環境研究会などの生徒の参加がありました。
参加した生徒たちからは自分たちの学校がどのような環境にあるのかということへの高い関心が寄せられたほか、二酸化窒素の測定の原理や健康への影響への質問も寄せられています。こういった探求活動を通じて自分たちの生活や環境に関心や知識を深めることは大切なことだと考えます。
またこのような環境測定は最近学校ではおこなわれにくくなってきています。そのような中で多くの若い先生方に測定に参加してもらったことも、これからの環境教育を考える上で大切なことだと思っています。
【4】ソラダスの測定結果分析
測定結果の一覧と地図、実施された学校の測定状況略図をつくっています。
測定結果については各校4つのカプセルを送っていますが、測定中に紛失したところや測定時間が短くなった学校がありました、また別の日に測定したところも数校ありました。ほとんどのデータは学校周辺で測定されています。一部に自宅で測定されたデータも入っています。
表には学校で測定されたデータとその地域のメッシュ測定(大阪府下は1km四方、大阪市内は500m四方の正方形で区切り、一つの正方形の中に5カ所の測定点をつくってその値を平均したもの)のデータを併記しました。
学校によっては何らかの理由で極端に低いデータが出ているものがあります。メッシュ測定のデータの3分の1の値をめどにデータが低いところの値には×をつけています。
白地図に記入した値は学校で測定されたものの中で最も高かった値です。×のデータについてはメッシュ測定の値を記入しています。
測定値で最も高かったのは56ppb(布施工科高)と50ppb(千里青雲高校)です。
布施工科高校は学校の東200mの中央環状線巨摩橋交差点、千里青雲高校は学校北側の中央環状線に新御堂北行きの道路が合流する(常時渋滞が起こっています。)道路に面したグラウンドの北側の門で測定しました。
地図を見てもらうとわかりますが大阪市以外でも守口市の国道1号線、阪神高速空港線、湾岸線などの自動車専用道路の周辺の学校では30~45ppbの高い値が出ています。
大阪市内は周辺に比べて値が高くなっていますが、特に汚染がひどいのは西淀川区、住之江区などの大阪湾に面した西側の地域の値が大きくなっています。これはメッシュ測定でも同様の結果が得られていて40ppbを超える地域が多く存在します。
逆に値が低かったのは能勢町、太子町などの周辺の山間部でした。15ppb以下の青色の地点は平野部でもいくつか存在しますが、10ppbを下回っているのは、山間部の学校以外ではごくわずかだと言うことも大阪の特徴でしょう。
校内の地図をつかって、他の測定点と比べてみましょう。多くの学校ではほとんど値に変化がなく地域の環境が均質になっています。しかし高速道路なのに面した学校では道路に近い観測点が飛び抜けて高い値を示しています。交通量の大きい道路が汚染源であることが示されています。千里青雲高校の例では、グラウンド北側では50ppbですが200mほど離れたグラウンド南端では18ppb校内の他の地点でも20ppb程度になっています。道路から離れると急激に濃度が下がっていることがわかります。このような結果は風向きなどの若干の影響はありますが、交通量の多い道路に面した学校で現れています。
二酸化窒素濃度については10年前の測定に比べても府下の各地で小さくなっていることが今回の調査でもわかります。規制が進んで自動車の排ガス対策の技術が良くなっていることが原因だと考えられます。
しかし今回の調査は学校という子どもたちが毎日多くの時間を過ごす場所で行われたことを考えると30ppb以上(桃)はもちろんのこと15ppb以上(緑)の地点も良好な環境と言えないことは明らかです。子どものぜん息やガンの発生などとの相関を環境省やWHOが認めています。大阪の子どもたちにどのような環境が必要かと言うことをこれをもとに府や国に求めていかなくてはいけないと思います。
【5】結果をもとに大阪の環境を語ろう
ソラダス2016の全体の結果は11月19日(土)に民医連ホールで報告会が行われます。
「学校でソラダス」の結果については11月27日(日)の岸和田市立北中学校で行われる大阪教育の集い環境分科会で報告します。測定に参加いただいた学校のみなさんの参加を呼びかけます。
また12月25日(日)に教育会館で参加した学校の生徒さんを中心とした表の見方や意味、測定方法の解説などを行う集会を予定しています。測定に参加された学校の生徒さんや関心をもつ方の参加を広く呼びかけます。
学校ソラダス結果報告
学校ソラダス結果報告学校ソラダス結果報告(エクセルデータ)
学校ソラダス結果地図 北
学校ソラダス結果地図 南