新学習指導要領 批判分析 特別活動

新学習指導要領 職場討議資料 > 特別活動

大阪教職員組合 「教育課程・教科書」検討委員会

特別活動 (特活)

目標について

 新学習指導要領では、現行学習指導要領にある「心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図り」という文言が削除されています。また、「自己を生かす能力」が「資質・能力を育成する」に置き換えられています。このことからも、総則で強調されている「資質・能力」が特別活動にも強調されていることが分かります。

 そして、この「資質・能力」は、各活動・学校行事の目標及び内容においても強調されていることが特徴です。さらに、これも総則で強調され、各教科においても述べられている○○の「見方・考え方」が、特別活動においても、「集団や形成者としての見方・考え方を働かせ」と日目頭に置かれていることも特徴です。

 この目標は、新学習指導要領では、3項目に細分化され(現行は目標のみ)①集団での「行動の仕方を身に付け」ること、②「合意形成を図ったり」すること、③「自己の生き方についての考えを深め、自己実現を図ろうとする態度を養う」こと、と述べられています。全体として、態度主義の現れと見ることができます。
各活動・学校行事の目標及び内容について

 「学級活動」の目標では、「将来の生き方を描くために意思決定し」と述べられていますが、小学生には高度な目標であり、小学生の発達段階をふまえたものと言えるのか、大きな疑問です。またここでも、「資質・能力の育成」を目指すとされています。

 内容においては、「児童が主体的に組織をつくり」と述べられています。それ自身はめざすべき内容といえますが、新学習指導要領のつめこみ教育の中では、そのようなゆとりが生まれるのか。はなはだ疑問です。こういうことをおこなうならば英語、道徳の教科化をやめるべきです。

 また、「節度ある生活にすること」や低学年から「約束やきまりを守ることの大切さ」が述べられていますが、特別活動の道徳化と言えるのではないでしょうか。
さらに、「一人一人のキャリア形成と 自己実現」という項目がおかれていますが、小学校段階から将来の仕事のことを考えるのは難しいのではないでしょうか。

 見方を変えれば、「身の丈を知り、自分に合った仕事を早い段階から見極めなさい」と言われているように感じられます。

 「児童会活動」においても、「資質・能力」の育成と述べられています。これは「クラブ活動」や「学校行事」においても同様であり、特別活動全体を「資質・能力」に収れんさせようとするものです。

 「指導計画の作成と内容の取扱い」では、「児童の主体的・対話的で深い学びの実現」が述べられており、これも総則がすべての教科、教科外活動を包み込むものとなっていることの表れです。

 「日の丸・君が代」の取り扱いについては、現行学習指導要領同様、「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と述べられています。学校への押しつけはやめるべきです。

全体としての問題点の指摘

 まず、「人格の完成」という言葉が抜けていることが大きな問題です。「その人らしく生きる」ことよりも「国や企業のための人材育成」をねらっているのが明らかです。本来特別活動は、子どもの自治活動を行うための領域であったはずです。それが、「国や企業のための人材育成」のための児童会・生徒会活動に変えられています。

 また、「合意形成」という言葉がやたらと出てきます。これは、「みんなとにかく一つにまとまりなさい。はみ出すことはゆるさない」と言っているように聞こえます。

 さらに「将来を見据えて」「キャリア」というような言葉が多いのも気になります。小さい頃から自分の能力に見切りをつけて、ふさわしい職業に就くことを勧められているようです。

 そして、最大の問題点は、主権者意識を育てる気がないというところです。
 「節度」「マナー」「きまりを守る」ばかりを強調して批判的精神や新たに作り変えること、新しく生み出すという視点がありません。物言わぬ国民を作ることをねらっているように感じます、

私たちの対抗軸

 これまで蓄積されてきている実践や、いま学校でとりくまれている、子どもの自主性を大切にし、子どもたちが自治の力を身につけられるような、真の意味での「学級会活動」や「児童会活動」「生徒会活動」をおこなうことが重要であると考えます。そして、それを通じて、主権者意識を育てることです。子どもたちが、そのような自主的自治的活動の経験をどれだけ積み上げられるか、が問われてきます。そのためにも、優れた児童会・生徒会活動の実践を集め、交流し合うことがより大切になってきます。

 また、「子ども観」「人間観」をもう一度学習し、「集団づくり」について議論することが大切です。「教育のつどい」・「教育のつどい大阪」の生活指導分科会に多くの人に参加してもらい、みんなで学び直すことが大事になってきます。