“統一教会”と性教育(映像)再掲

“統一教会”と性教育(映像)

北日本放送が取材・放送した内容を掲載・紹介します。動画は以下から。

■“統一教会”と性教育■(北日本放送 2022年9月2日)

北日本放送・金曜ジャーナル2022年9月2日放送(リンク先が変更されていたので,訂正しました)

【“統一教会”と性教育】テキスト
金曜ジャーナルです。
 きょうはいわゆる“統一教会”と性教育についてです。
 取材している土井記者です。
 土井あゆみ記者
 政治家との関係が連日明らかになっています。そして、その両者の関係により、性に関連する政策も歪められている実態が分かってきました。性教育の在り方について考えます。

 富山駅の南北自由通路に月イチで登場する駅ナカ保健室。体や性の悩みを気軽に相談できる場をつくろうと、産婦人科医たちが開設しています。7月のこの日、富山大学の医学部生も参加し、避妊具の使い方などもアドバイスしました。

少年「俺、8か月くらい付き合った女の子、1回もゴム付けていなくて毎日やってました」
医学部生「コンドーム使ったことある?」
少年「コンドーム使わないタイプです」
医学部生「コンドームを使わないんだったら本当は2人とも性感染症の検査をした方がいい」

 15歳だという、この少年は、コンドームの使い方を知りませんでした。

少年「なんでこういう仕事しているんですか?」
女性「正しい情報を伝えたい!1滴の精液でも妊娠するんだよ」

 現在の学習指導要領では、義務教育を卒業する15歳までに、学校で「性交」「避妊」について教えないことになっています。

河野美代子産婦人科医(広島市)
「それまで本当に、私たちも試行錯誤しながら学校の先生たちと一緒に色々な性教育を、どういうふうに子どもたちに伝えればいいのか、取り組んでいたんですが、中学校では、避妊は教えてはならないとなったんです、指導要領で。教科書から一斉に性交という言葉が消えました」

 性教育に力を入れている広島市の産婦人科医、河野美代子さんです。
1992年に始まった性教育。十分な知識がない十代の人工妊娠中絶や性感染症が増えるなか、河野さんは、自分の体を知って自分を大切にしてほしいと、学校などで講演をしてきました。
 しかし、学習指導要領の改訂に伴い、1998年に盛り込まれた「はどめ規定」によって、中学校で「避妊」を教えられなくなり、性感染症を伝える時も「性交」という表現が使えなくなりました。
 河野さんは、こうした性教育の後退に“統一教会”が大きく関与していると指摘します。
「性教育バッシング」です。

河野産婦人科医
「講演をしていると、“統一教会”の人が入り込んできて、いつのまにか録音してて写真を撮って、一部を切り取って、こんなことを言っているみたいなのを写真付きで出されたりすると批難が殺到するわけですよ。中学生にセックスをそそのかして、家庭を崩壊させて革命を狙ってるって堂々と書かれたから、私は名誉毀損で訴えたわけですし。他にももっともっと、本当にえげつないビラをまかれたりしました。これはもう、刑事事件で告訴しましたけれども、告訴して逮捕者も出ましたけれども、講演会を潰されたのは数限りない。本当にないことないこといっぱいされて本当につらかったですね」

 2005年、名誉毀損に対する損害賠償などを求めた裁判の相手は、広島市PTA協議会の会長。支援者には、“統一教会”の関係者が含まれていました。当時、信者が何人も各学校のPTA役員を務めていたといいます。

 このころ国政では、自民党が「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」を発足。その座長を務めたのは安倍元総理大臣、事務局長は、山谷えり子参議院議員でした。
 これは、2010年の“統一教会”の内部文書です。7月の参議院選挙を前に投票を呼び掛けています。

「山谷えり子先生の必勝のためご尽力宜しくお願いいたします」「ジェンダーフリー問題、青少年問題にとってなくてはならない先生であります」
「山谷先生、安倍先生なくして私たちの『み旨』は成就できません」

 東京都では2003年、養護学校で性教育に使われていた人形が教育委員会によって回収され、教員ら116人が処分されていました。

 この人形は、性暴力の被害者にも加害者にもなりかねない知的障害のある子どもたちに、自分を大切にすることや、体や性について学んでもらうための教材でしたがー。

山谷えり子氏
「資料4でございます。これは『セックス人形』と言われているもので東京都、石原都知事が、教育委員会が調べたものです。80の小学校からこのセックス人形が出てきました。どういうふうにやるか『性技術』をこういう人形を使って教えるわけです」

 2002年には、全国の中学生用の性教育パンフレットが「性を興味本位に記述している」などとして回収されました。避妊の具体的な方法や失敗率、自分の気持ちを大事にして嫌なことははっきり断ることや相手の気持ちを尊重することなどがまとめられていました。
 自民党のプロジェクトチームによって、文部科学省は2005年、全国の小中学校、特別支援学校を対象に性教育の実態調査を実施。教育現場は、萎縮していったといいます。

河野産婦人科医
「過激な性教育をするべきでないという人たちは、教えるから、したがるんだと言っているんですね。そうじゃない、知れば知るほど慎重になる、これ私は確信を持っていますね。彼女たちは、本当に知らなかった、こんなに簡単に妊娠するなんて思わなかったとかね、それから断ると彼に嫌われるんじゃないかと思ったとかね、痛々しいんです」

 “統一教会”からの性教育バッシングは、富山でも起きていました。
議会議員で、産婦人科医の種部恭子さんです。
 種部さんも性教育の現場で、“統一教会”の関係者からのバッシングを受けてきました。
 種部産婦人科医
「保護者の方の質問をいただく時間があるんですけれど、お一人が手を挙げられて、今お話を聞いたような中身で自分の子どもにこんな性教育なんかされたら困ると、過激だとこんな内容のやろうとしてるなんてとんでもないと。その方の発言が終わった後に会場の離れたところで、後ろの方の離れたところから、最初は男性の方、その次、女性の方が手を挙げられて、うちの子にもこんなことを教えられたら困りますと、過激な性教育をしていると」
 教えていたのは、県内でも1990年代に入って急激に増えていた人工妊娠中絶や、性感染症の実態など。
 終了後、ある保護者から、会場の端と端に座っていたのは、夫婦で、“統一教会”の関係者だと教えられました。
 種部さんが受けたバッシングは、この小学校での事例と、中学校の2件だけでしたが、富山市では、性教育を途切れさせないようにと産婦人科医らが連携して続けてきたといいます。

 種部産婦人科医
「性教育は思想でやってる話ではありません。エビデンスに基づいたことをすべきだと思うんですね。ところが、そういう考えがない方たちが、色んなイデオロギーで、これは純潔の教育をすべきだとかね。現実として子どもたちはもう、そういう状況にはないことは数字が物語ってるわけですよね。子どもたちの中絶があり、あるいは性的な搾取がされている、そして子どもたちで妊娠するというのは、背景にあるのはこれは暴力です。ですからそれは知らせる必要があるにも関わらず、被害にあってる子どもがいるとしたら、それに対して何もしないと不作為的になりますよね」

 教団の問題を長年追及する紀藤正樹弁護士は…
 紀藤弁護士
「過激に見える写真だけを取り上げて世界日報などで報じてこういう機関誌で大々的にやられて、そしてそれを見た政治家が連動してということを繰り返して、基本的に当時、性教育の問題を強く報道していたテレビも新聞もそれほどない。だけども、世界日報はかなり強くキャンペーンを貼っていた。政治家にはただで配られるので、そこが政策決定に影響を与えた可能性は十分にあると思う」

 武道キャスター
 わたしたちの暮らしにかなり影響がありそうですね。
 土井記者
 種部さんも河野さんも、性教育の必要性を訴えるのは、ともに医療現場で望まない妊娠に立ち会ってきたからこそで、まさに現場からの告発です。

 妊娠を望まない状態の人に対する、避妊しない性交は、性暴力です。適切な情報を知らないまま、性感染症になったり、予期せず妊娠したりするのは、自己責任でしょうか。子どもたちに必要なのは、自分の体のことを知り、自分を大切にするための適切な情報です。

 子どもたちの未来に必要な情報を阻んでいるのは誰でしょうか。このまま教団を利用し、利用されていくのか、人権や命を守るための政治をするのか、政治家の見識が問われていると思います。
 武道キャスター
金曜ジャーナルでした。