これからの教員評価システムのあるべき姿をめざして

「学校づくりと教職員」研究会

■科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)報告書■
これからの教員評価システムのあるべき姿をめざして
ー教員評価システムから教員支援育成システムへー

平成30〜令和2年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)
「教員の職能成長と学校の活性化に寄与する教員の評価育成システムはどのようにあるべきか」
研究代表者:杉浦 健(近畿大学教職教育部)
研究実施:大阪教育文化センター「学校づくりと教職員」研究会(2021年8月1日発行)

【概要】
「評価育成システムによる給与反映は廃止を」

 「学校づくりと教職員」研究会(代表・杉浦健近畿大学教授)は,「教員の職能成長と学校の活性化に寄与する教員の評価システムはどのようにあるべきか」をテーマに「これからの教員評価システムのあるべき姿をめざしてー教員評価育成システムから教員支援育成システムへー」と題する調査研究をまとめました(科学研究費助成事業)。
 これは,2017年(平成29年8月)におこなわれた大阪府教育委員会の「小職員の評価・育成システムについてのアンケート」を中心に考察をすすめています。この府教委アンケートは,二次評価者(管理職)全員と無作為抽出の被評価者を対象としており,評価者1072人,被評価者4556人が回答しています。
 
評価システムによる給与反映の廃止を
 
 本研究では,府教委の「調査結果」ではほぼ記載のなかった,膨大な「自由記述」にも分析を加え,「教員評価システムによって給与反映をおこなうことを廃止」を提案しています。
 例えば,「客観的にかつ公平に評価するのは絶対に不可能」という自由記述の【不可能】やシステムの【廃止】,【多忙】などをキーワードに分析も試みています。
 
教員評価の問題点,「給与反映の廃止」理由

 教員評価システムのあり方を考えるにあたって,この研究で明らかになったことは,
① 教員の能力を客観的活公平・公正に評価することが非常に難しい
② 教員評価システムの問題の多くは,給与反映のために客観的かつ公平・公正に評価することをめざすことに起因
③ 教員評価システムにおける目標設定と管理職との面談は十分な意味がある
④ 教員が教師として成長・発達することとは,教師としてのアイデンティティ形成であること
⑤ ④のことから,教員の成長・発達とそれに伴う専門性の発達のために必要なのは,客観的かつ公平・公正な評定ではなく,支援とケアと協働性である
の,5点です。

 そして,「給与反映の廃止」理由については,
⑴ 教員評価システムによって,学校は常に分断の危機にさらされ,教員の成長・発達を妨げている
⑵ 教員の能力や業績を客観的かつ公平・公正に測定することが原理的に非常に難しい。数値化できないものは評価対象外になる,教員の仕事の貢献を個人の業績として切り分けることも困難。
⑶ もともと目標管理制度に基づく評価システムは,一般企業に取り入れられたが,近年その人事評価システムを廃止するところが増えている。労力を費やす割には効果がない。
⑷ 管理職の働き方改革のため。負担が管理職に集中。

 最後の章では,「これからの教員評価システム=教員支援育成システムは,評価と指導の論理ではなく,カウンセリングとコーチングの論理に基づくべき」と結んでいます。【大阪教育文化センターだよりNo.158(2021.10.22)より】
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