話し合いましょう 子どもたちの健やかな成長発達のために

話し合いましょう 子どもたちの健やかな成長発達のために

2014年秋 子どもと教育・文化を守る大阪府民会議
事務局 大阪教職員組合

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【1面】

1.学校は、確かな学力と生きる希望を育むところ

 学校は、子どもたちが自然や社会についての基本を理解し、物事の是非を自ら判断し、学び行動する力をつけるところです。また、人間的つながりを深め、民主主義の基本を理解し、人間への信頼を育て、生きる希望を育むところです。

 「高校には行かない、勉強しない」と言っていた息子が、「高校の勉強は難しいけれど楽しい。友達とも仲良しで、先生もいい」と、元気に学校に通っています。(高校生の母親の声)

2.今こそ一人ひとりを大切にする学校・教育へ

 「全国学力調査」の点数を上げるために、「テスト対策」を子どもに強いて、勉強嫌いを増やすのではなく、「学習がよくわかる」「学校が楽しい」という充実感を育てることが大切です。人は充実感が満たされれば、自分のことが好きになり、他人にも優しくなれます。人間の値打ちや学力を多面的にとらえて、一人ひとりを大切にし、豊かな人間性、生きる希望を育む学校・教育が求められています。

 学校や塾では、受験のことばかり言われます。競争させられながら勉強していく中で、ただ教科書を覚え、受験・成績のために勉強している気がします。あの学力の高いとされる北欧諸国は競争教育ではありません。一人ひとりを尊重する教育の方が自分から進んで勉強できるようになると思います。(高校生の声)

3.こんなに難しくなっている学習内容

1dLますで12はいの水が入りました。この水のかさは、何mLですか

 この問題は、小学2年生(上)の教科書にのっています。2×2などのかけ算九九は2年生(下)で学び、1×12や10倍、100倍のかけ算は3年生で学習します。こんなに難しい問題を2年生の子どもたちはわかるでしょうか。mLは、以前の教科書では3年生(下)で学び、26年前は6年生で学んでいました。学習内容は、子どもの発達段階にそくしてどの学年で何を教えるのか、子どもの実態に応じて考えられるべきです。

現在、小学2年で学ぶ学習事項

  • 体積(mL、dL、L)  (これまで扱ってきた学年 小学3年)
  • 時間(日、時、分) (これまで扱ってきた学年 小学3年)
  • 正方形、長方形、 (これまで扱ってきた学年 小学3年)
  • 直角三角形、箱の形(これまで扱ってきた学年 小学3年)
  • 頂点、辺、面   (これまで扱ってきた学年 小学3年)
  • 1/2や1/4などのかんたんな分数 (これまで扱ってきた学年 小学4年)

4.競争教育を改め、子どもに笑顔を

 日本の教育は、3回にわたって国連から「過度に競争主義的な教育制度が子どもの発達をゆがめている」と指摘され、改善するよう勧告されています。ユニセフの調査では日本の15歳の子どもの29.8%が、OECD平均を大きく上回り、「自分は孤独だと感じている」と答えています。過度に競争的な教育制度を改め、子どもたちに笑顔をとりもどしましょう。

大阪の教育 解決すべき緊急の課題は

公立志望が増えているのに、なぜ「高校をつぶすの?」

先生がまったく足りず、がんばりも限界!

 大阪府教育委員会は、昨年、公立高校再編整備計画を策定し、2018年度までに「府立高校・市立高校合わせて7校程度の募集停止を行う」ことを前提に、まず、2016年入試から咲洲高校と池田北高校の募集停止=廃校を11月の教育委員会議で決定しようとしています。

 大阪では、公立と私立への進学割合はここ3年間毎年、1.4ポイントずつ公立志望が増え、今後さらに志望は増える傾向です。少子化の今こそ、子どもたちの学びと成長を保障する高校35人以下学級を大阪府でも実施すべきです。1学級40人を前提として算出された高校数以上は不要とする「高校つぶし」は許されません。

 咲洲、池田北両校で巣立った卒業生の多くは、学ぶ喜びを高校で知り、「母校をつぶさないで」と悲痛な叫びをあげています。「高校つぶし」は子どもたちの学ぶ権利を奪う最悪の教育破壊です。

くるくる変わるな!入試制度、中1からの受験競争激化は許されません!

 くるくる変わる高校入試制度。子どもたちや保護者、学校現場の混乱は大変なものです。今年、25000人もの不合格を出した全日制公立高校2回入試制度は、大きな府民世論で原則1回入試制度に改善されました。しかし、2016年春の入試(案)では、中学1年からの評定を調査書に記述することが盛り込まれ、中学「統一テスト」導入により、受験競争が中学1年からはじまることへの懸念が指摘されています。父母や教職員の声を無視し、子どもたちのゆたかな学びと健全な成長・発達を奪う、中1からの受験競争前倒し(案)とそれにつながる中学「統一テスト」導入はやめるべきです。

「教育に穴があく」って?

 今、大阪では「教育に穴があく」つまり、病気や出産、介護で先生が休んでも、かわりの先生が長期間学校に来ず、「授業に先生がいない」「自習続き」などのとんでもない事態が広がっています。毎月、府内の50~60の学校で恒常的な「穴」があいています。

 その原因は、正規の教職員が十分に採用されず、採用不足を補うために講師が配置されているため、代替講師が大きく不足しているからです。緊急にこの問題を解決するとともに、長時間過密勤務の中で、50%教員が「過労死ライン」を超えている異常事態を解決するためにも、すみやかに正規教員をふやすことが急務です。

【2面】

一人ひとりの子どもを大切にするために

学校や子育てへの本格的支援を

 大事なことは、国や行政として・子どもの生活実態を踏まえた、学校や子育てなどへの支援を本格的にすすめ、貧困をなくし、教育条件を抜本的に改善することです。

学ぶ喜び、生きる希望をはぐくむ教育へ

  1. 豊かな学力、自分の頭で考え、すすんで行動する力を
  2. 子どもを主人公に、保護者と教職員が力を合わせてつくる学校に
  3. 教職員を増やし、きめ細かな指導ができる学校に
  4. 国と大阪府の責任で、教育予算を増やし、教育条件の抜本的な改善を

放課後の子どもたち

学童保育は留守家庭の子どもたちの放課後の居場所 ~子どもたちに最善の利益を~

学童保育は安心できる居場所

 学童保育は、留守家庭の子どもたちの放課後や学校休業日の生活と遊びの場です。子どもたちには、放課後の自由な時間、安心・安全な生活環境が保障されます。

学童保育の中で育まれる自己肯定観

 毎日「おかえり」と迎えてくれる指導員、ほっとできる生活空間、気心の知れた仲間の存在が学童保育の大きな魅力です。小学生ならではの仲間づくり、多様な取り組みによる自己肯定感、人間への信頼感などを築いていきます。

「放課後子ども総合プラン」で大きく変わる学童保育

 政府が2015年度から打ち出している「放課後子ども総合プラン」では、留守家庭でないすべての子どもを対象とする「放課後子供教室」と学童保育の一体型の運営が推進されており、施設の大規模化がすすむことが危惧され.、仲間づくり、豊かな生活内容が保障されにくくなります。指導員にかかる負担も大きく、「配慮や支援が必要な子ども」のケアが困難になります。

子どもの権利条約にもとづく学童保育の拡充

 子どもの権利条約に示された子どもたちの「最善の利益」を保障するため、すべての子どもを対象とする「放課後子供教室」と、学童保育を固有の施策として拡充することが求められています。

教育条件整備は緊急の課題

高すぎる父母負担!(新日本婦人の会2014年4~5月アンケートより)

 高校生、大学生がいる家庭の教育費平均は別表の通り。教育費の捻出は(複数回答可)、①奨学金28.2%276万円で返済339万円 ②学資保険積み立て60.8% ③子どもがアルバイト31.5% ④祖父母からの援助23.9% ⑤親がトリプルワーク23.6% ⑥その他(預貯金解約)14.6%と、なっています。

国の責任による小学3年以上の「35人以下学級」実施は白紙状態です

 都道府県段階では各自治体ごとの少人数学級が実施され、国基準の実施は大阪、広島、熊本の3県のみとなっています。35人以下学級で、「勉強がよくわかるようになった」「クラスの中がゆったりし、欠席や保健室に通う子どもが減った」など、子どもたちの学校におけるすごし方は大きく変わります。

大学生は奨学金で借金地獄!

 日本の大学の学費は70年代以降急騰し、初年度納付金は60年と比べ国立大学で約82倍、私立大学で約19倍です。世界では、OECD加盟34か国中、半数の17か国が大学授業料無償の上、32か国で返済義務のない給付型奨学金が支給されています。授業料が有償で給付型奨学金がないのは日本だけで1日本の異常さが目立ちます。

教育費をOECD諸国平均にするだけで、高校・大学授業料は無償化実現!

 日本の公財政教育支出のOECD比は3.8%で、OECD諸国平均5.6%に比べて最低です。OECD並みにすれば、教育費は8.5兆円も増え、少人数学級実施の教職員定数増(標準定数を改善)、中学校完全給食、学校施設改善などの子どもたちの学びを保障する施策が実現できます。

 国が「公立高校授業料無償化」を廃止し、「所得制限」を導入したため、年収910万円以上の家庭は授業料を納付することになりました。また、大阪では、年収610万円未満の私学授業料無償化継続が危ぶまれています。教育費無償化は世界の常識です。教育無償化のとりくみを大きく前進させましょう。