高校入試に学テを利用?

高校入試に学テを利用? 2016年12月8日

高校入試に学テを利用?「全国学テ」を内申書へ反映?

大阪教育文化センター「学力問題研究会」のパンフレット「どの子にも学ぶ力とよろこびを」のp12~14を紹介します。全文はパンフレットをご覧下さい。(案内はこちら)


 2015年4月10日、「全国学テ」の学校別調査結果を高校入試の内申に反映すると、大阪府教育委員会が決めました。「大事なことがなんでこんなに急に決まるの?」と生徒たちが驚くなか、11日後の4月21日に「全国学テ」が実施されました。

 大阪府の方式は、「全国学テ」の結果をもとに各校のレベルを把握し、学校がつける内申点の平均が、そのレベルに応じて指定する範囲に収まるようにするものです。成績の良い学校はより多くの生徒に高評価をつけられ、逆の学校は評価を低く抑えられることになります。(下記資料「朝日新聞」2015年12月4日付)

 大阪方式は、教育施策や教育指導の改善という本来の「全国学テ」の趣旨から逸脱していると、7月に文部科学省専門家会議で指摘されました。その会議では、入学者選抜に利用されれば、各校の事前対策が増えることも指摘されました。内申書反映で起きたことこれまでとは違い、「全国学テ」の結果が高校入試に影響することによって、生徒へのプレッシャーが強まりました。今年度の「全国学テ」の中学3年生の結果は、これまでどの科目も40位台がほとんどだったのが、数学A、数学Bは20位台、国語Bは30位台に上昇しました(下記資料「校種・教科・区分別正答率比較/対全国比経年比較」表および折れ線グラフ)。

 文部科学省専門家会議でも指摘されているような事前対策(過去問練習など)がより強まり、日々の授業がないがしろにされる恐れがよりいっそう強まります(資料「こんなにテスト潰け2015年度の中学校年間計画」)。その後、11月24日には、文部科学省が入試への使用禁止を次年度の実施要領に明記する方針を決め、大阪府教育委員会は、次年度から中学3年生の府独自テスト「中3チャレンジテスト」を新設することを同月27日に決定しました。

(※編集部注 2016年度からは、6月に3年生の府チャレンジテストが追加。大阪市ではさらに10月に3年生の市統一テストが実施され、その結果で内申書が決まる。実力テストや定期試験は各校によって実施回数は異なる)

学校間の際限ない学力獲得競争が…

 今年度の「全国学テ」にしろ「中3チャレンジテスト」にしろ、大阪方式は学校別調査結果を反映させるものであるため、いわゆる成績のよくない子どもを学テ実施日に欠席させるなどの排除が横行する可能性があります。実際に、「賢い子どもだけが受けた方が、自分の学校が有利になる」「○○(学力の低い子ども)が休んだらいい」と教室で発言する子どもがいました。「おまえのせいで学校の平均点が下がり、5をつける人数が減った」「内申点下がったらお前の責任や」と言われていじめられている子どももいます。子どもの学びと人権を侵害し、練習した成果を競うのが、「学力」の評価なのでしょうか。今回の内申反映問題以前から起きている問題は、まだあります。一部の地域では「全国学テ」の調査結果を公表してきました。大阪府のチャレンジテストでは、市町村別の教科別平均得点が一覧表になって公開されました。こうしたことで、学校間の際限ない学力獲得競争が起きているという現実もあります。「きみの(小)学校悪いやんか、うちの学校はいい」「先生、うちの学校あかんねんやろ」と子どもが言っています。子どもの「学力」を評価するはずのものが、学校や教師を評価する道具にもなっているのです。

 そもそも、今年度から大阪府でも導入された「目標に準拠した評価」(絶対評価)は、子どもたちを教えている教師、学校がつくった目標を基準にしておこなう評価です。したがって、学校ごとに異なってくるのも当然です。この評価を入試に用いること自体が難しいという指摘にも耳を傾け、入試制度のあり方を考えなおす時期にきているのではないでしょうか。


 上の文章は。大阪教育文化センター「学力問題研究会」のパンフレット「どの子にも学ぶ力とよろこびを」のp12~14です。全文はパンフレットをご覧下さい。(案内はこちら)